トレードで利益を得るには、知識、判断、行動の3つが必要です。 それらを身につけるまでの道筋を解説します。
2021年2月26日
トレードは技術
トレードで利益を得るためには技術が必要です。 これは、ポジションを保有する時間が短いトレードスタイルほど顕著になります。
1回のトレード結果がどうなるかは運です。しかし、試行回数が増えるにしたがって運の要素は減っていきます。 逆に増えてくるのが技術の要素です。
デイトレなどの短期売買では、トレードの回数が多くなるので収支は技術力に見合ったものになる可能性が高く、 また、試行を重ねるスピードが早いので、あるべき結果に収束するのも早くなります。
実力の無い人は「試行回数を増やさない」ことで利益を得られる可能性を高められます。 逆に、実力のある人は「試行を増やす」ことで結果を運に左右される可能性を下げられます。
目指すところは後者であり、技術に裏打ちされた利益を得られるようになることです。
技術って具体的に何なのさ?
技術を身につけようと言っても、「それが具体的に何なのか」、「どうやったら習得できるのか」が分からないと、何から手を付けて良いか迷ってしまいます。
短期売買の技術に限らず、技術は以下の3つによって構成されます。
上から順に身に付けていって、この3つが揃うと「技術が習得できた」となるのです。 つまり、デイトレ(短期売買)の技術習得には3つのステップがあることになります。
知識
まずは、知識を得るところから。同じチャートであっても、初心者と上級者とではまったく見えているものが違います。 これは、「同じチャートからでも受け取る情報量に差がある」と言い換えてもよいでしょう。 このギャップを埋めるのが知識です。
情報量に差がでるのは、認識できるパターンの数に違いがあるから です。
「長く続いた上昇から下降に転じた」という状況ひとつ取っても、その人の知識レベルによって見え方は異なります。
「押し目買い」の知識がある人は、上昇再開のタイミングを狙うことになります。 そして、陽線が出たので買い出動したが、まだ調整は終わっていなかったというのはよくある話です。
これは、「上昇 ➡ 調整」というパターン認識から、「上昇再開 ➡ 高値更新」という流れを予測してのアクションだと言えます。 そして、「陽線の出現」を上昇再開のサインとして見たわけです。
パターン認識は、「その後の見立て」とセットになっている。パターン認識ができると、その後の値動きに予想を立てられるようになる。
知識が増えると
たとえば、「アセンディング・トライアングル」という概念を知っていれば、同じチャートに別のパターンを見い出せたりします。
「上昇 ➡ 調整(アセンディング・トライアングル)」をパターンとして認識すると、その後の見立ては同じであっても、 「上限のブレイク」を上昇再開のサインとして採用するといった違いがでます。
陽線が出ただけでは、「まだ調整が終わったとは言えない」という判断になり、 先走ったエントリーを避けられるのです。
認識できるパターン数を増やす
最初に申し上げた通り、初心者と上級者では、同じチャートから受け取る情報量に差があります。 その差が行動の違いにも繋がってきます。ですから、パターン認識は、
の3つがセットになったものだとも言えるでしょう。
パターン認識ができないと、現在の状況の判断ができず、その後の予測も立てられず、そのため「何をすればよいのか分からない」となってしまいます。
ですから、初心者がまずやるべきことは、認識できるパターンの数を増やす ことです。 これには知識が体系的にまとまった本を読むことが役立つはずです。
まずは、本を通しで読んでパターンの目次を頭の中に作ります。記憶のフックを作るイメージです。
この段階では、パターンひとつひとつには深く入り込まず、「こんな考えもあるのか」といった具合に全体像を掴むようにします。 これには、ピンポイントの情報取得が強みのWEBより、周辺知識にも目が向く本が向いています。
次に、完成した過去のチャートに現れたパターンを認識する練習に移ります。 これはチャートの形状と頭の中の目次とを照らし合わせる作業とも言えるでしょう。
ここで、「あ!このチャートは、本にあった〇〇〇パターンに見えるかも」という経験を積むのです。
それを繰り返して知識が定着してくると、リアルタイムのチャートでも「今は〇〇〇パターンが進行中だな」と認識できるようになります。
参考書籍
参考になりそうな書籍を2つあげておきます。
1冊目は、定番の「先物市場のテクニカル分析」。発売は1990年でありながら、未だに売れ続けているロングセラーです。
持っておいて損はない本だと思いますが、高い、古い、厚いの3拍子が揃っています。 どちらかと言えば、気合が入っている人向けです。
もう1冊は、「株ケイ線・チャートで儲けるしくみ」。
ちょっと偏見かもしれませんが、相場関連の本で女性が著者なのは珍しいです。 女性ならではの細やかさや丁寧さががあって非常に読みやすい本になっています。
トレード技術を学んでみようと思っての最初の1冊なら、こちらの方が良いかもしれません。
見識
認識できるパターンの数を増やすことは間違いなく必要なことです。 ですが、それが直接利益に結びつくかといったら微妙なところなのです。
認識できるパターンを増やすというのは、アドバンテージを得るというより、ハンデを減らす行為だからです。 仕入れた知識は基本事項であって、みんなも知っていること。ですから、それを自分の強みにすることは難しいでしょう。
ただし、学んだ知識は決して無駄になりません。
パターンによる予測の精度
あるパターンを認識して、そこから予測される動きに乗った場合、裏切られることがほとんどです。 実際はそんなことないのですが、体感的には「まったく信用ならない」と感じると思います。 そう感じる理由には2つあります。
パターンが示すその後の予測の精度は90%当たるといった精度ではありません。 良くて60%ぐらいです。相場は上がるか下がるかの二択なのですから、サイコロを振っても50%は当たるでしょう。それよりかは少しマシ程度なのです。
苦労して学んだのだから、活躍してもらわないと困るわけで、勝手に大きな期待をしてしまっているというのが理由の1つ目です。
パターン単体による予測精度は決して高くない。だから、過信は禁物。
もう1つの理由は、知識が増えてきて、認識できるパターンが増えてくると陥りやすい罠にはまっている可能性です。
人には、「自分の考えを正当化するために、それを裏付ける情報ばかりを探してしまう傾向」があります。 これを「確証バイアス」と呼びます。
確証バイアスが働くと、自分にとって都合の良いパターンを無意識に探します。 買いたいと思っているときは、買う根拠となるパターンを見つけ出そうとします。 そして、知識が増えてきた段階だと、これがいくらでもできてしまうのです。
パターンは曖昧な部分があるので、主観的に(強引に)見れば、当てはめられます。 引き出しがいくつもあれば、その内のどれかは自分を正当化する助けになるはずです。
でも、マーケットはあなたの都合などお構いなしですから、当然あなたの見込みとは異なる動きになります。
「チャートを読む」とは、主観を排除して、あるがままに見ること。
エッジを積み上げる
パターン認識から導かれる予測の精度は決して高いものではありません。 では、パターン認識は役立たないのかと言ったら、それは違います。
主観を排し、客観的なパターン認識ができるとほんの少しだけ有利になります。 これを「エッジ」と言います。
エッジは、それ単体では頼りなくても、小さなエッジを積み上げることで信頼できるものになります。 この 「積み上げたエッジ」をエントリーの根拠とする のです。
チャートから読み取れる複数のパターンを比較検討したり、 買いを考えるときは売り方のつもりになってチャートを眺めてみたりと、自分の知識を総動員して予想を立てます。
知識が増えると、同じチャートでも異なる見方ができるようになります。 必要な知識をどんどん吸収し、状況判断とその後の見立ての精度を高める努力をしなければなりません。
この段階を「見識が身に付いた」と言います。学んだ知識を活かして、正しい判断をくだせる能力が 「見識」 です。
胆力
最後のステップになります。しかし、ここがまた長い道のりなのです。詳しい話は別の機会にするとして、今回はその概要だけをお伝えします。
トレード手法
相場の見通しが立てられるようになって、しかもその精度が高くても、不思議とそれで利益が得られるようになるわけではないのです。
次に、相場の見立てを利益に変える「トレード手法」が必要になります。
人間は感情的になると誤った判断をしてしまいます。 ですから、トレード手法とは、感情をコントロールするために自分に課すルールだとも言えます。
トレード手法の中身は以下のようなものです。
トレード手法は「期待値がプラス」であることが大前提です。 そして、自分に合ったものであるかがとても重要になります。 トレーダーの成長に合わせて手法も進化しますので、トレード手法は自分の手で作るのが一番です。
経験
トレード手法が確立できた後、今度はそれを運用する「人」が問題になります。 ルールを設けても、そのルールを頻繁に破っていたら意味がありません。
ルールに従うトレーダーに成長するためには経験を積む必要があります。
ここまでが「トレード技術」です。技術は活かしてこそのもの。 ですから、技術を活かす能力も必要になります。それを 「胆力」 と言います。
胆力が付いて、心が揺さぶられることなく、淡々とトレードをこなせるようになると上級者の仲間入りです。