MACDの基本を押さえましょう。そうすれば、使い方も分かるし、パラメーターの設定に悩むことも無くなるはずです。
2021年3月24日
MACDはトレンド系? オシレーター系?
MACD(マックディー)は、最も人気のあるインジケーターの1つです。 その誕生は1970年代であり、なんと50年近くもテクニカル分析ツールの代表格として活躍を続けています。
インジケーターはトレンド系とオシレーター系に別れます。 トレンドを見極めるために用いられるのがトレンド系で、買われ過ぎや売られ過ぎを見極めるために用いられるのがオシレーター系です。
MACDはどちらに分類されるのか。その答えは、どちらでもあり、 MACDはトレンド系とオシレーター系の両方の特徴を併せ持っている と言えます。
両方の特徴があるので、MACDの見方はちょっとだけ複雑です。 それでも、移動平均線による相場分析を発展させただけのもの なので、MACDについて理解することは難しくありません。
MACDの「気持ち」が分かれば、その使い方やパラーメーターの設定に悩むことも無くなるはずです!
チャートを準備する
MACDを理解するためには、MACDが具体的に何をしているのかを知ることが近道です。
まずは、MACDを理解するために使うチャートを用意しましょう。言葉と画像だけより、実際にMACDをチャートに表示して操作した方が理解が進むはずです。
下記の画像はTradingViewのチャートになります。このページに表示している画像はクリックで全面表示が可能です。
手順
- MACDを表示する
- MACDのシグナルラインとヒストグラムを消す
- MACDのゼロの位置に水平線描写ツールで水平線を引く
- 期間12のEMAを表示する
- 期間26のEMAを表示する
MACDにはシグナルラインやヒストグラムなどを表示する機能もありますが、最初はMACDラインだけを表示します。 水平線描写ツールは左のツールバーの中にありますので、これを使いゼロの位置に線を引いておきましょう。
2本のEMAは、TradingView内蔵のMACDのデフォルトパラメーター、
- Fast Lengthが「12」
- Slow Lengthが「26」
と同じものを引いただけです。
MACDライン
MACDラインの正体は、
です。簡単に言えば2つの差であり、チャートに設定した12本EMAと26本EMAの差を数値としてプロットしているに過ぎません。
ゼロライン
MACDラインを見る上で重要なのはゼロラインです。MACDラインがゼロより上にあるのか下にあるのかを意識することが大切です。
短期EMAが長期EMAを上回っているとき、MACDラインはゼロ以上になります。 そして、短期EMAが長期EMAを上回るのは価格が上昇傾向にあるときです。 したがって、MACDラインがゼロより上に位置するときは価格が上昇傾向にあることを意味します。
MACDラインがちょうどゼロの位置にあるとき、それは短期と長期のEMAが等しいことを意味します。
そして、MACDラインがゼロラインを跨ぐのは、短期と長期の位置関係の逆転、つまり短期EMAと長期EMAのクロスが発生するときです。
チャートからも、MACDラインがゼロラインを跨ぐときと、同時にEMAのクロスが発生していることが分かります。
短期のEMAと長期のEMAの位置関係の逆転は、相場の反転の可能性を示唆しているので重要な情報です。 それをゼロラインを跨ぐMACDラインの動きが教えてくれます。
MACDラインとゼロラインの位置関係でトレンドを把握できます。これがMACDのトレンド系インジケーターとしての使用法です。
4つの状態
MACDラインがゼロより上にあるか下にあるかで、MACDの状態ひいては相場の状態を2つに別けることができました。
ゼロラインを基準に「MACDラインの動き」を見れば、
- ゼロラインに向かって行く動き
- ゼロラインから離れていく動き
で、さらに2つに別けることができ、計4つのパターンに分類が可能です。
シグナルライン
MACDの一般的な見方としては、
- MACDラインがシグナルラインを越えたら買い
- MACDラインがシグナルラインを割ったら売り
とされ、シグナルラインが重視されます。
シグナルラインを表示してみました。
シグナルラインはMACDラインを平滑化しただけのもです。平滑化はスムージングなどとも呼ばれ、ノイズを無くすために行なわれるデータ処理です。
ちょっとした値動きでも短期と長期のEMAの差は縮まり、MACDラインは「ゼロに向かう動き」を見せます。
これだとダマシが多くなるので、平滑化して「傾向」を見ようとするわけです。 要するに、MACDラインがゼロラインから離れているのか向かっているのかの判別をしやすくすることが、シグナルラインの目的となります。
平滑化の期間(Signal Smoothing)を短くすれば、反応が早くなる代わりにダマシが多くなります。逆に長くすれば反応が遅くなり、ダマシは減ることになります。
MACDで押し目買い
相場の基本は、「上昇トレンドの時は買い、下降トレンドの時は売り」を考えることです。 上昇トレンドであれば「押し目買い」、下降トレンドであれば「戻り売り」を狙うのが基本的なトレード方法となります。
トレンドはMACDラインとゼロラインの位置関係で把握できました。後は、調整の動きを待って、トレンド再開の動きを確認してエントリーすることになります。
調整の動きには限度があります。行き過ぎれば、それは調整ではなくもはやトレンドだからです。 限度に収まっているかの目安にゼロラインを使うことができます。 そして、トレンド再開の合図として使用するのがシグナルラインです。
このような使い方をした場合、MACDはオシレーター系のインジケーターと同じ役割を果たします。
オシレーターは、トレンドに対する調整の限界を知るために使うのが基本です。トレンドの天と底を当てるために使用することは推奨されません。
MACDが先行指標になることも
EMAは期間が短いほど値動きに早く反応します。期間が長いほどEMAの反応は鈍くなります。
価格が上昇を続けていて、その勢いが弱まった場合、短期のEMAは比較的早く上昇が止まります。 一方、反応の鈍い長期EMAはしばらく上昇を続けるのです。
その結果、短期と長期のEMAの差は狭まることになります。
下降に転じなくてもMACDは陰転する
急上昇からヨコヨコとなった場合、EMAの差の狭まりは顕著に現れます。つまり、MACDラインがゼロに向かう動きを見せるのです。
一方、MACDラインを平滑化したシグナルラインは、反応が遅いのでしばらくは上昇を続けます。 こういった場合、価格が下がっていないにも関わらず、MACDは陰転します。
その後、価格がヨコヨコから下降に転じれば、MACDは市場に先行したことになります。
MACDは決して反応の早いインジケーターではありません。しかし、状況によってはマーケットに先行することがあることは覚えておきましょう。
ダイバージェンス
値動きとインジケーターの動きの間に不一致が発生することを「ダイバージェンス」と言います。
本来、値動きとインジケーターの動きは連動するはずですですが、
といったことが起こります。これがダイバージェンスで、相場が反転するシグナルとして考えられています。
安値を更新する動きがありましたが、MACDラインは前回の安値ほど下がっていません。 きれいに決まったとは言えないかもしれませんが、これもダイバージェンスの一例です。
まとめ
以上MACDについてあれこれと書いてみました。しかし、MACDを極めた人からすれば、まだまだな内容でしょう。
インジケーターは、あれこれ手を出すよりも1つを突き詰めた方が成果が期待できます。 新しいインジケーターを探す代わりに、これまで使ってきたインジケーターの1つに的を絞って徹底的に研究してみるのも良いかもしれません。
最後にMACDのパラメーターについて少しだけ触れておきたいと思います。
大きな流れに直近の小さな流れが合致したときにエントリーするのが相場の定石です。 この考えにMACDを活かすなら、大きな流れが長期EMA、小さな流れが短期EMAとなります。 後は、反応速度が早い方が良いのか、ダマシが少ない方が良いのかで、MACDラインの平滑期間が決まります。
時間の感覚は人それぞれ、他のインジケーターとの兼ね合いもあるでしょう。ですから、正解は無いとなります。 どんな設定にしても、ビシッと決まる時もあれば、外れる時もあるのです。
重要なのは、パラメーターの設定ではなく、インジケーターを使う上でのマインドセットです。
MACDを使うと決め、パラメーターの設定に悩んでいるなら、 デフォルトの12-26-9を使いつつ、MACDだけでなくインジケーターとの付き合い方への理解も深めていきましょう!