人は片言隻句によって生きる力を得る。相場でも片言隻句は正しい道を進む力となる。
2021年7月1日
片言隻句
元来世間の人々は、長編論文なんてものによって人生を渡るものではない。大抵は片言隻句、即ちごく短い、しかし無限の味わいのある真理・教えによって、生きる力を得るのであって、論理的知識を駆使して長々と書き記された論文・論説などは、専門家の知識・技術の研究には役立つけれども、人生の案内にはならない。人生の幾山川を渡る力にはならない。
安岡正篤「活眼 活学」P142
片言隻句(へんげんせきく)とは、簡単に暗記できるぐらいの短い言葉です。 シンプルだけど奥の深いもので、真理を突いているからこそ、日常的に経験する失敗も原因を探ると結局そこに行きついたりします。
知識を詰め込んでも中々成績には結びつかない。その原因の1つは、それらの知識が血肉となっていないからというのが考えられます。 知識が消化しきれていないから、行動に結びつかないわけです。
では、どうすれば仕入れた知識を活かすことができるのか。これは繰り返すしかないのでしょう。 そんな時、小難しい長ったらしい文章や考え方ではなく、繰り返し思い起こせるような短い言葉が適しています。
天網恢恢疎にして漏らさず
こんな言葉を知っていると、「バレなければ大丈夫」ではなく、人目のないところでも悪いことはできないと考え、真っ当な行動を取るようになります。 心に刻まれた短い言葉が、人生を正しい道に導いてくれるのです。
待つのも相場
相場の世界の道案内にも片言隻句が役立ちます。普通は、相場格言なんて呼ばれ方をします。「待つのも相場」も、その1つでしょう。
負けトレードとなった後、振り返ってみると「なんでこんなところでエントリーしたんだろう」ということがよくあります。 自ら定めたルールを無視した、焦りや不安から生じた感情的なトレードというのが大半です。
原因を探ればメンタルに行き着くことになりますが、ルールに無い「余計なトレード」をしているのですから「待てなかった」とも表現できそうです。
「余計なトレード」を我慢して、「待つ」ことができれば、トレード成績は間違いなく向上します。 でも、これが難しいことは皆さんも良くご存じのはずです。
エントリーするか迷った時、「待つのも相場」という言葉を思い出したなら、きっと余計なトレードの回数は減るでしょう。 ちょっとだけ冷静になり、自らのルールに合致した状況なのかを確認する余裕が生まれるためです。
相場の片言隻句は、多かれ少なかれトレーダーにとって役立つものばかりです。 既に知っている相場格言でも、時には深く考え、自分の経験と照らし合わせみるのも良いかもしれません。
自らたどり着く
待つことのできるトレーダーの「待つのも相場」と、ついつい余計な売買をしてしまうトレーダーの知識としての「待つのも相場」では、同じ言葉であっても重みがまったく違います。
色々な経験をして、反省をして、負けの原因を突き詰めて、研究に研究を重ねて、ようやくたどり着いた考えから、今度は余計なものをそぎ落としていって、最後に残ったものを言葉にする。待つことのできるトレーダーの「待つのも相場」は、その1つなのです。
相場上級者にアドバイスを求めて教えたもらった「待つのも相場」と、苦労の末に自らたどり着いた「待つのも相場」では、同じもののはずがありません。
努力し、自らたどり着いた答えがあり、「あれ、相場格言が同じ様なことを言っている」と思ったなら、その答えは恐らく正解なのでしょう。
きっと「なんだ、最初から答えを教えてくれていたんじゃん」と感じるはずです。