金融商品の特徴は、専門用語を使って表現されます。ですから、用語か分かっていないと、自分にあった商品を選ぶことが難しくなります。
2021年2月22日
デイトレの対象を決める前に
デイトレの対象となる金融商品には様々なものがあります。 「どの商品が良いか」を考えるとき、人の意見を鵜呑みにせず、自ら判断するためには用語の理解が欠かせません。
証券会社が用意する用語集は言葉が固すぎる という方のために、分かりやすさを重視して解説します。 まずはイメージをつかみましょう。
差金決済と証拠金
ある商品を100,000円で買って、100,100円で売れば100円の利益になります。 100,000円を使って100円儲けたのですから、利益率で考えれば0.1%です。
$$ \frac{100}{100000} = 0.001 $$
この商品の日々の価格変動が大きくても数百円、平均すると100円くらいだった場合、これはちょっと非効率です。 大きくても数百円という変動のために10万円という額のお金が拘束されてしまうからです。 投下した資金とリスクのバランスが良くありません。
そこで、「商品を買ったことにして、変動結果により発生した差額を後で清算する約束」という考えが生まれました。
資金を拘束されることなく、同じ結果を得られるわけですからとても効率的です。 しかし、この方法だと「本当にその約束が果たされるの?」という新たな問題が生まれます。
支払い義務が生じた者が本当に支払いに応じるのか。 その意思があっても、「ちゃんと支払うよ。だけど、今すぐは無理だから1か月待ってよ」じゃ困るわけです。 だから、支払い能力の有無も重要になります。
バランスを整える
そもそも、数百円の変動のために10万円が拘束されるというバランスの悪さが問題の始まりでした。 このバランスを適正なものに調整してやれば状況を改善できるはずです。
- 満額だとバランスが悪い
- 約束だけでは心もとない
つまり、この間を取るということです。ある程度の額を確保しておけば、約束を確かなものにすることができるでしょう。
変動は大きくて数百円なのですから、2000円ほど預かっておけば何が起きてもまず対応できそうです。
それぞれ利益100円、損失100円で同じ結果が得られます。
100円の利益が出た場合を考えれば、2000円を使って100円儲けたのですから、利益率は5%です。資金効率が大幅に改善しました。
$$ \frac{100}{2000} = 0.05 $$
このような仕組みを 差金決済 と言います。また、預けるお金のことを 証拠金 と呼びます。
いくら預かっておけばよいかは、商品の価格がどのぐらい変動するのかによって変わります。 その変動も一定ではなく、大きくなったり小さくなったりするのが普通です。したがって、預かっておくべき金額も一定にはなりません。
具体的な額は、シカゴ・マーカンタイル取引所が開発した「SPAN」という計算方法で算出されるのが一般的で、マーケットの状況にあわせて日々更新されます。
証拠金額は変動します。口座残高には常に余裕を持っておくことが重要です。
レバレッジ
先ほどの例では、2000円で実質10万円のポジションを取っていることになります。 本来であれば10万円ないと取れないポジションが、たったの2000円で実現できてしまっています。 倍率で言えば50倍です。
小さな力で大きな力を生む「テコの原理」が発生しているとも言えるでしょう。これを英語を使って表現すると「レバレッジが効いている」となります。
レバレッジの効力は、自分にとってプラスにもマイナスにも働きます。 この事実をしっかりと理解した上で、積極的に使いこなそうという姿勢が大切です。
車を運転することで人を殺めてしまうことはありえます。 だからと言って避けるのではなく、その事実を認識した上で細心の注意を払いながら、みんなが車という便利な道具を使いこなしているのです。
最低取引単位
スーパーに行ったら、リンゴが1個100円で売られていました。当たり前ですが、100円を支払うことでリンゴ1個を購入できます。
一方、青果市場ではリンゴが1個80円で売られていました。これはお得だと考えて1個購入しようとすると…
「ダメだよ。うちは10個単位でしか売らないよ!」
市場はプロの世界ですから、細々とした取引は行わないのです。 これは金融市場も似たところがあって、それぞれの商品で取引単位が決まっています。 要するに、バラ売りに対応してくれない商品もあるのです。
これを 最低取引単位 と言います。
呼値(最小ティック)
商品の価格変動を利益に変えるのがトレードですが、 この価格の変動がどのくらいずつ起こるのかは、その商品によります。
日経平均が30000円から30001円に1円増えるのと、ドル円が100円から101円に1円増えるのとでは、1円のインパクトがまったく異なるからです。
100円から最も小さく値上がりしたとき、101円になるものもあれば、105円や110円になるものもあります。 為替ではもっと小さく、100.001円といった単位になります。
これはデイトレのように小さな値幅でも狙うスタイルだと重要な話です。
例えば、100円の次が110円の商品であれば10円以上値上がりしないと利益に変えることができないのに対し、 100円の次が101円の商品であれば10円以下の値動きも利益に変えることができるからです。
この価格変動の最初単位のことを 呼値(よびね)と言います。
市場取引と相対取引
金融商品を売買するとき、必ずその相手方がいます。買いなら、それを売ってくれる人が必要です。 同様に、売りなら、それを買ってくれる人が必要です。
売買条件に対する双方の合意があってはじめて売買は成立します。 この売買には2つのタイプがあります。
市場取引
マーケットを介して売買を行う場合、買い手と売り手の双方が希望の金額と数量を提示します。
「Aを1個100円で10個売るよ!」
「こっちはAを1個95円で3個売るぜ!」
「Aを1個90円で5個売ってくれる人はいませんか?」
こういった市場参加者の希望をマーケットの機能が集約してくれます。その情報をまとめたものを「板」と言います。 昔はこういった情報を黒板に書いていたので、その名残ですね。
自分が買いたいと思っているのであれば、板を見て、売り方が提示する金額と数量に納得すれば、注文を出して売買が成立するという仕組みです。
買いであろうと、売りであろうと、その相手方は同じマーケットに参加している他のトレーダーになります。 ですから、あなたの利益は他のトレーダーの損失、あなたの損失は他のトレーダーの利益という関係です。
こういった取引の形態を 市場取引 と呼びます。
相対取引
もう1つのタイプは、相手方が他のトレーダーではなく証券会社になるものです。つまり、トレーダーと証券会社との取引です。
この場合、買う金額と売る金額を提示するのは証券会社のみとなります。 あとは、その金額に証券会社と付き合いのあるトレーダーが納得するかどうかです。
あなたの利益は証券会社の損失、あなたの損失は証券会社の利益という関係になります。
こういった取引の形態を 相対取引(あいたい)と呼びます。
比較
相対取引の場合、売買できる金額は証券会社次第ですので、トレーダーと証券会社では証券会社の方が有利だと言えます。
ポジションが無い状態で、これから買うか売るかするなら、あなたには以下の3つの選択肢があります。
- 買う
- 売る
- 何もしない
証券会社が提示する金額に納得がいかなければ、何もしなければよいのです。
しかし、既にポジションがあって、どうしても反対売買(決済)をしなければいけない状況なら、 あなたは証券会社が提示する金額を受け入れざるをえません。
一方、市場取引であれば、市場に参加するトレーダー間に有利不利はなく公平な取引が行なわれます。
ただし、これをもって相対取引はダメ、市場取引が良いと判断するのは過剰な反応でしょう。 顧客を食い物にするようなことをやっていれば、悪評もたちますし、サービスを継続することも難しくなるからです。