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プットのデルタ

コールのデルタとプットのデルタの関係。


2021年9月30日

プットのデルタはどうなるの

以下の記事で、原資産の現在価格を変化させることで「コール」のデルタがどう変化するかを確認してみました。

こうなると、当然のことながら「プット」のデルタについても知りたくなります。

コールで行ったデルタの計算をプットでも行ってみましょう。前提条件はコールのデルタを計算した時と同じです。

  • 無配当の原株は、現在1単位800円
  • コールの権利行使価格は800円(ATM)
  • ATMのコールのプレミアムは218.18円
  • オプションはヨーロピアンタイプ
  • 満期までの期間は1年
  • 短期金利レートは10%(道中の変動しない)
  • 原資産の価格変動率は上昇の場合+50%、下落の場合-50%

原資産の現在価格が800円の場合

さっそく始めていきます。権利行使価格800円に対し、現在価格が800円というATMのケースです。

原資産価格の値動き

現在800円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:800円 x 1.5 = 1200円
  • 下落の場合:800円 x 0.5 = 400円
  • 原資産価格の値動きは、以下のように計算できます。

    原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 = 1200円 - 400円 = 800円

    ここまではコールの場合と同じです。

    オプション価格の値動き

    コールのオプション価格の値動きを確認するにあたり、上昇のケースと下落のケースのmax(S-K, 0)の計算を行いました。 プット場合はSとKの位置が入れ替わり、max(K-S, 0)を考えます。

    2通りの株価に対するプットの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(K-S, 0) = max(800-1200, 0) = 0円
  • 下落の場合:max(K-S, 0) = max(800-400, 0) = 400円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 0円 - 400円 = -400円

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算します。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{-400円}{800円} = -0.5 $

    したがって、$\varDelta = -0.5$ということになります。

    ATMのコールのデルタは0.5でしたが、プットの場合は符号が反転して-0.5になりました。 それもそのはずで、原資産価格が上昇すると、プットの価格は下がる関係にあるからです。

    また、デルタを「権利行使される確率」と見るなら、プットの場合はデルタの絶対値を取れば良いことになります。

    原資産の現在価格が900円の場合

    コールのデルタの計算で行ったように、現在の原資産価格を動かすと、プットのデルタ値がどう変化するかみてみましょう。

    原資産価格の値動き

    現在900円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:900円 x 1.5 = 1350円
  • 下落の場合:900円 x 0.5 = 450円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 = 1350円 - 450円 = 900円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するプットの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(K-S, 0) = max(800-1350, 0) = 0円
  • 下落の場合:max(K-S, 0) = max(800-450, 0) = 350円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 0円 - 350円 = -350円

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみましょう。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{-350円}{900円} = -0.3889 $

    したがって、$\varDelta = -0.3889$ということになります。

    ATMのプットは$\varDelta = -0.5$でしたので、プットが権利行使される確率は50%でした。 原資産価格800円に対し権利行使価格も800円ですので、少しでも原株が値下がればITMとなります。

    原資産価格900円の場合は100円以上の値下がりがないとITMになりません。権利行使される確率が50%より低いことには納得がいきます。

    コールとプットの関係

    権利行使価格が同じコールとプットは、どちらかの権利行使される可能性が上がれば、もう片方の可能性は下がるという関係にあります。 また、片方が権利行使可能ならもう片方は権利行使不能であるとも言えます。 これを0と1で表現すれば、組み合わせは0-1か1-0のいずれかで、合計すれば常に1です。

    原資産価格が900の「コール」のデルタは$\varDelta = 0.61111$でした。 「プット」のデルタは先ほど確認したように$\varDelta = -0.3889$です。プットの絶対値を取り、足し合わせると1になります。

    $ コールの\varDelta + プットの|\varDelta| = 1%$

    原資産価格 コール(A) プット(B) A + |B|
    800円 0.5 -0.5 1
    900円 0.61111 -0.3889 1

    プットのデルタは常にマイナスを取りますので、絶対値を取るのではなく以下の式のように考えることもできます。

    $ コールの\varDelta - プットの\varDelta = 1%$

    であるなら、プットのデルタはコールのデルタから1を引くだけで計算できることになります。

    $ プットの\varDelta = コールの\varDelta - 1%$

    プットのデルタが取る範囲

    コールのデルタが取るのは、

    $ 0 \leqq \varDelta \leqq 1 $

    の範囲でした。プットは符号が逆になりますので、以下の範囲の値を取ることになります。

    $ -1 \leqq \varDelta \leqq 0 $

    ついでに言っておけば、原株のデルタは1です。 これは、原株を買うことは権利行使価格0円のコールを買うことと等しいためです。 DITMのコールは1でした。このことからコールの最大価格は原株の価格となります。

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