1. 相場
  2. オプション

コールのデルタを1期間の2項モデルでシミュレートしてみる

マネーネスの違いによってデルタがどう変化するのか。


2021年9月25日

It’s Greeks to me

オプション価格を決定する要因には、

  1. 原資産価格
  2. 権利行使価格
  3. 満期日までの時間
  4. ボラティリティ

の4つがあります。 オプションの価値は本質的価値と付帯的価値から成り立ち、これら4つの要因の変化がオプション価格に影響を与えます。

オプション価値 = 本質的価値 + 時間価値 + ボラティリティ価値

具体的には4つの要因に対する以下のような作用がオプション価格を変動させます。

  1. 原資産価格の値動き
  2. 原資産価格と権利行使価格の相対的関係(マネーネス)
  3. タイムディケイの進行
  4. ボラティリティの程度

スーパーマーケットに並ぶ商品に割引シールが張られることがあります。 商品の価格が下がったということになりますが、これは「需給」により価格が変化したと言うよりは、消費期限が迫ったためのものです。 つまり、タイムディケイの進行により、価値が下がったとも言えるわけです。

オプションも期限のある生鮮食品のような金融商品ですので似た特徴を持っています。 オプション価格が変化した時、変化した原因は様々です。 それが、原資産価格の変動によるものか、タイムディケイに進行によるものか、はたまたボラティリティ(需給)によるものか、その見極めが必要になってきます。

複数のレッグを組み合わせたポジションの場合、保有するポジション全体が抱えるリスクを把握するのは容易ではありません。 そこで登場するのが「グリークス」と呼ばれるリスク指標です。

オプション価格を決定する要因は主に4つですので、リスク指標も4つあります。

  1. デルタ(Delta)
  2. ガンマ(Gamma)
  3. セータ(Theta)
  4. ベガ(Vega)

この他にも金利を表すロー(Rho)や、レバレッジを表すラムダ(Lambda)などもありますが、実務の面で重要になってくるのは上記の4つです。

デルタ

ブラックとショールズの考えを参考に、1期間の2項モデルを使ってデルタについて詳しく見ていきましょう。

ブラックとショールズは、株券オプションの「カバードコール戦略」によってヘッジポートフォリオを作ることができると考えました。 この戦略から「原株1単位のロングに対して何単位のコールをショートすればよいか」と問題を設定した上で、アービトラージ不在という条件でのコールの公正価格の導出を主張したのでした。

ヘッジポートフォリオの構築には、カバードコール戦略を採用し、原株1単位のロングに対しATMのコールをショートします。 その時、原株1単位のロングに対しショートすべきコールの単位は、

$$ \frac{1}{\varDelta} $$

とされています。もし、デルタが0.5なら、1/0.5で2単位のコールをショートするといった具合です。 これでポートフォリオはヘッジできるとブラックとショールズは主張しているわけです。

何単位のコールをショートすべきかはデルタ($\varDelta$)次第であり、その肝心のデルは以下のように定義されます。

$$ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $$

1期間の2項モデルを使っ、原株の値動きをシミュレートすることで、デルタがどういった挙動を示すのかを見ていきましょう。 それにあたって、前提条件を設定します。

  • 無配当の原株は、現在1単位800円
  • コールの権利行使価格は800円(ATM)
  • ATMのコールのプレミアムは218.18円
  • オプションはヨーロピアンタイプ
  • 満期までの期間は1年
  • 短期金利レートは10%(道中の変動しない)
  • 原資産の価格変動率は上昇の場合+50%、下落の場合-50%

原株の現在価格800円の場合のデルタに関しては以下の記事で計算を行っています。 結果だけを言えば、デルタは0.5となりました。

これからやることは、権利行使価格を固定し、原株の現在価格だけを変化させる、つまりマネーネスを変化させて、それぞれのデルタを確認することです。 下の表の空欄を埋めていきます。

原資産価格 マネーネス デルタ コールの公正価格
400円 OTM
500円 OTM
600円 OTM
700円 OTM
800円 ATM 0.5 218.18円
900円 ITM
1000円 ITM
1100円 ITM
1200円 ITM
1300円 ITM
1400円 ITM
1500円 ITM
1600円 ITM
1700円 ITM
1800円 ITM

原資産の現在価格が500円の場合

さっそく始めていきましょう。まずは権利行使価格800円に対し、現在価格が500円というOTMのケースからです。

原資産価格の値動き

現在500円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:500円 x 1.5 = 750円
  • 下落の場合:500円 x 0.5 = 250円
  • 原資産価格の値動きは、以下のように計算できます。

    原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 = 750円 - 250円 = 500円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(750-800, 0) = 0円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(250-800, 0) = 0円
  • コールは原株が上昇しようが下落しようがOTMで終わります。 つまり、満期において750円であろうと、250円であろうと、コールは0円の価値しかありません。 したがって、オプション価格の値動きは、以下のように計算できます。

    オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 0円 - 0円 = 0円

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみましょう。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{0円}{500円} $

    したがって、$ \varDelta = 0$ということになります。

    ヘッジポートフォリオ

    ヘッジポートフォリオをつくるには、原株1単位のロングに対し、1/$\varDelta$単位のコールをショートする必要がりますが、 $\varDelta = 0$の場合、1を0で割ることはできません。

    そこで、0そのものではなく「0に限りなく近い値」と考えてみることにします。例えば、$\varDelta = 0.00001$といった具合です。 この場合、

    $ \frac{1}{\varDelta} = \frac{1}{0.00001} = 100,000$

    となって、10万単位のコールを売ることになります。 さらに0に近づければ、ショートすべきコールの単位は大きくなりますが、これはどういった意味を持つのでしょう。

    満期において、上昇しても下落しても、コールはOTMです。 つまり、権利行使されることはないのだから、コールを売れるだけ売れば、そこで得たプレミアムは丸々儲けになるということです。

    満期において750円と250円のケースしか想定していないので、いくらコールを売ってもリスクはゼロです。 しかし、現実の世界では想定外のことが頻繁に起こるのでリスクはゼロではありません。言わば机上の空論というやつです。

    それでも、デルタや公正価格の計算には想定が必要です。

    オプションの構成価格を理論計算式によって算出するには、必ず将来における価格変動の大きさを「想定」しなければならないのです。

    ブラック・ショールズ・モデルは「1期間の2項モデル」ではなく、微分方程式を使って理論価格を計算する公式ですが、将来の想定をしけければならいことに違いはありません。計算できるのは想定に基づく理論値であり、想定に誤りがあれば算出された価格も正しいものとはならない。モデルも万能ではないということです。

    トレード

    ここではコールの価格を1円と仮定します。つまり、最小の取引価格ということです。 1単位の原株の購入にかかる費用は500円なので、500単位のコールを売れば購入資金は賄えることになります。

    ポートフォリオの現在価値

    原株のロング -500円 x 1単位 = -500円
    コールのショート 1円 x 500単位 = 500円
    合計 0円

    ポートフォリオの将来価値:株価が750円に上昇した場合

    原株の返済売り 750円 x 1単位 = 750円
    コールの価値(権利行使されない) 0円 x 500単位 = 0円
    合計 750円

    ポートフォリオの将来価値:株価が250円に下落した場合

    原株の返済売り 250円 x 1単位 = 250円
    コールの価値(権利行使されない) 0円 x 500単位 = 0円
    合計 250円

    現在価格が500円の原株が満期日において750円もしくは250円になると想定した場合、コールを売ることで750円または250円の利益を得ることができます。

    原資産の現在価格が400円の場合

    現在価格が500円より下だった場合はどうなるのでしょうか。原資産の現在価格が400円のケースを見てみます。

    原資産価格の値動き

    現在400円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:400円 x 1.5 = 600円
  • 下落の場合:400円 x 0.5 = 200円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =600円 - 200円 = 400円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(600-800, 0) = 0円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(200-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 0円 - 0円 = 0円

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみる。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{0円}{400円} $

    原株が500円の時と同じ$ \varDelta = 0$となりました。原株の現在価格が下がったにも関わらず、デルタはマイナスに突入することなく0を維持しています。

    これより下、300円や200円で計算してもデルタは0となります。どうやらコールのデルタの下限は0のようです。

    原資産の現在価格が1700円の場合

    逆に、今度は原資産価格に対し権利行使価格がかなり内側にあるケースを見てみましょう。つまり、深いITMということです。

    原資産価格の値動き

    現在1700円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:1700円 x 1.5 = 2550円
  • 下落の場合:1700円 x 0.5 = 850円
  • 原資産価格の値動きは、以下のように計算できます。

    原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 = 2550円 - 850円 = 1700円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(2550-800, 0) = 1750円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(850-800, 0) = 50円
  • OP価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 1750円 - 50円 = 1700円

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみます。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{1700円}{1700円} = 1$

    したがって、$ \varDelta = 1 $となります。原資産価格の値動きとオプション価格の値動きが等しいため、このような結果となります。

    原資産の現在価格が1800円の場合

    それでは、さらに原資産の現在価格が上だった場合どうなるでしょうか。

    原資産価格の値動き

    現在1800円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:1800円 x 1.5 = 2700円
  • 下落の場合:1800円 x 0.5 = 900円
  • 原資産価格の値動きは、以下のように計算できます。

    原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 = 2700円 - 900円 = 1800円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになる。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(2700-800, 0) = 1900円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(900-800, 0) = 100円
  • OP価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 1900円 - 100円 = 1800円

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみます。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{1800円}{1800円} = 1$

    したがって、$ \varDelta = 1 $となります。1700円のケースと同様に、原資産価格の値動きとオプション価格の値動きが等しくなりました。 これは、1900円、2000円と現在価格を上昇させても同じ結果となります。

    原資産価格が上昇しても下落してもITMで終わるコールのデルタは1になるようです。

    コールのデルタの特徴 その1

    ここまでで5つの価格のデルタが計算できました。Dは「Deep」の意味です。

    原資産価格 マネーネス デルタ
    400円 DOTM 0
    500円 DOTM 0
    800円 ATM 0.5
    1700円 DITM 1
    1800円 DITM 1

    権利行使価格800円のコールは、ATMで0.5となり、DOTMでは0、DITMでは1を取ることが分かりました。 そして、コールのデルタは0から1の値を取るとも言えそうです。

    デルタは権利行使される確率

    ATMのデルタは0.5でした。 ATMのコールを買うと、原資産価格が上がれば儲かり、下がれば損をすることになります。 相場が上昇する確率と下落する確率が等しいとするならば、儲かる確率も50%です。

    (D)OTMの場合のデルタは0でした。 シミュレーションでは、原株が上昇したとしてもOTMで終わり、デルタが0のオプションを買っても儲かる確率は0%です。

    (D)ITMの場合のデルタは1でした。 シミュレーションでは、原株が下落したとしてもITMで終わり、デルタが1のオプションを買えば儲かる確率は100%です。

    こうしてみると、デルタは「オプションを買って儲かる確率」そのものです。 別の言い方をすれば、「オプションが権利行使される確率」とも言えるでしょう。

    コールのデルタは0から1の間の値を取る

    ブラックとショールズの論文ではコールのデルタは以下の値を取るとされています。

    $$ 0 <\varDelta < 1 $$

    つまり、0に限りなく近い値を取ることはあっても、完全な0にはならないということです。1も同様、1に限りなく近い値は取っても完全な1は取りません。

    微分方程式を使った理論価格計算ではこの間に値は収まるのですが、ここまで見てきたように、「1期間の2項モデル」ではデルタが0や1となることが確認されました。 これは、「1期間の2項モデル」が大雑把なモデルであるためです。

    原資産の現在価格が600円の場合

    続いて、DOTMとATMの間で、コールのデルタがどう変化するかを見ていきましょう。

    原資産価格の値動き

    現在600円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:600円 x 1.5 = 900円
  • 下落の場合:600円 x 0.5 = 300円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =900円 - 300円 = 600円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(900-800, 0) = 100円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(300-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 100円 - 0円 = 100円

    原株が500円や400円のケースでは原株が上昇してもOTMで終わっていましたが、今回は上昇するとITMで満期を迎えることになります。

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみます。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{100円}{600円} $

    $ \varDelta = \frac{1}{6} = 0.16667 $

    計算の結果、$ \varDelta = 0.16667$となりました。デルタが0ではなくなりました。

    ヘッジポートフォリオ

    デルタは1/6ですから、ヘッジポートフォリオを作るためには現在価格600円の原株1単位のロングに対し、6単位のコールをショートすることになります。

    ポートフォリオの将来価値:株価が900円に上昇した場合

    原株の返済売り 900円 x 1単位 = 900円
    コールがITM(権利行使される) -100円 x 6単位 = -600円
    合計 300円

    ポートフォリオの将来価値:株価が300円に下落した場合

    原株の返済売り 300円 x 1単位 = 300円
    コールがOTM(権利行使されない) 0円 x 6単位 = 0円
    合計 300円

    このように6単位のコールをショートすれば、ポートフォリオは完全にヘッジされます。

    コールの適正価格

    ヘッジポートフォリオの現在価値は、原株1単位のロングとコール6単位のショートであるから以下のようになるわけですが、 コールの適正価格はいくらでしょうか。

    ポートフォリオの現在価値

    原株のロング 600円 x 1単位 = 600円
    コールのショート $x$円 x 6単位 = 6$x$円
    合計 600円 - 6$x$円

    ヘッジポートフォリオを満期(1年)まで安全金利(10%)で運用すると、将来価値は300円になると考えます。

    $(600円 - 6x) (1.1) = 300円$

    $600円 - 6x = \frac{300円}{1.1} $

    $6x = 600円 - \frac{300円}{1.1}$

    $x = \frac{1}{6}(600 - \frac{300円}{1.1}) = 54.545円$

    したがって、公正価格は54.545円となります。

    この価格を基にポートフォリオをの現在価値をキャッシュフローで見ると以下のようになります。

    ポートフォリオの現在価値

    原株のロング -600円 x 1単位 = -600円
    コールのショート 55円 x 6単位 = 330円
    合計 -270円

    出費270円の投資は1年後には300円になります。270 x 1.1 = 297ですから、安全金利で運用した場合とほぼ同じになります。

    さて、現在価格が600円で権利行使価格800円のコールの公正価格54.545円と計算できたわけですが、この金額は現在価格が800円の218.18円と比べるとかなり安いものです。

    原株が800円の場合、1円でも値上がりすればコールはITMになるのに対し、原株が600円の場合、201円値上がりしないとITMとはなりません。

    前者のデルタは0.5で儲かる確率は50%、後者のデルタは0.167で儲かる確率は16%と見ることができます。 そう考えれば、オプション価格の違いも直観に従ったものであると言えるでしょう。

    原資産の現在価格が700円の場合

    さらに現在の原資産価格を権利行使価格800円に近づけてみましょう。

    原資産価格の値動き

    現在700円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:700円 x 1.5 = 1050円
  • 下落の場合:700円 x 0.5 = 350円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =1050円 - 350円 = 700円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(1050-800, 0) = 250円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(350-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 250円 - 0円 = 250円

    原株が600円のケースと同じように、原株が上昇した場合にはITMで、下降した場合にはOTMで終わることになります。

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみましょう。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{250円}{700円} = 0.3571$

    デルタは0.3571で、600円のケースの0.167と比べると倍ほどになっています。 別の言い方をすれば、権利行使の可能性が16.7%から35.7%に増加したとも言えます。

    ヘッジポートフォリオ

    デルタは0.3571ですから、現在価格700円の原株1単位のロングに対し、2.8単位のコールをショートすることになります。

    $ \frac{1}{\varDelta} = \frac{1}{0.3571} = 2.8単位$

    ポートフォリオの将来価値:株価が1050円に上昇した場合

    原株の返済売り 1050円 x 1単位 = 1050円
    コールがITM(権利行使される) -250円 x 2.8単位 = 700円
    合計 350円

    ポートフォリオの将来価値:株価が350円に下落した場合

    原株の返済売り 350円 x 1単位 = 350円
    コールがOTM(権利行使されない) 0円 x 2.8単位 = 0円
    合計 350円

    このように2.8単位のコールをショートすることで、ポートフォリオは完全にヘッジされます。

    コールの適正価格

    ヘッジポートフォリオの現在価値は、原株1単位のロングとコール2.8単位のショートですから以下のようになります。 では、コールの適正価格はいくらでしょうか。

    ポートフォリオの現在価値

    原株のロング 700円 x 1単位 = 700円
    コールのショート $x$円 x 2.8単位 = 2.8$x$円
    合計 700円 - 2.8$x$円

    ヘッジポートフォリオを満期(1年)まで安全金利(10%)で運用すると、将来価値は350円になると考えます。

    $(700円 - 2.8x) (1.1) = 350円$

    $700円 - 2.8x = \frac{350円}{1.1} $

    $2.8x = 700円 - \frac{300円}{1.1}$

    $x = \frac{1}{2.8}(700 - \frac{350円}{1.1}) = 136.364円$

    したがって、コールの公正価格は136.364円となります。

    コールのデルタの特徴 その2

    コールの価格

    500円 1円
    600円 54.545円
    700円 136.364円

    原株の価格が600円から700円になったことで、コールの適正価格は約2.5倍となりました。 このようにオプション価格の変化は非線形(non linear)です。

    原株の値上がりによるマネーネスが変化の結果、コールの価格が線形ではなく非線形に急激に上昇する可能性かあることを意味します。。

    コールのデルタ

    500円 0に限りなく近い
    600円 0.167
    700円 0.3571

    コールのデルタも600円から700円への変化で約2倍になっています。 デルタは「儲かる確率」を意味するのでした。 儲かる可能性が倍なので、その対価も54.545円から136.364円に値上がりしたとも解釈できます。

    原資産の現在価格が900円の場合

    800円のケースはデルタ0.5と計算が終わっているので、今度はITMのケースを見ていきます。

    原資産価格の値動き

    原株の現在価格が900円となると、権利行使価格800のコールは現在のところITMになっています。 現在900円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:900円 x 1.5 = 1350円
  • 下落の場合:900円 x 0.5 = 450円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =1350円 - 450円 = 900円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(1350-800, 0) = 550円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(450-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 550円 - 0円 = 550円

    原株が上昇した場合にはITMで、下降した場合にはOTMで終わることになります。

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみる。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{550円}{900円} = 0.6111$

    デルタは0.6111となり、ATMのデルタ(0.5)より高い値です。最大値の1に近づいているのが分かります。

    ヘッジポートフォリオ

    デルタは0.6111ですから、現在価格900円の原株1単位のロングに対し、1.6364単位のコールをショートすることになります。

    $ \frac{1}{\varDelta} = \frac{1}{0.6111} = 1.6364単位$

    ポートフォリオの将来価値:株価が1350円に上昇した場合

    原株の返済売り 1350円 x 1単位 = 1350円
    コールがITM(権利行使される) -550円 x 1.6364単位 = -900円
    合計 450円

    ポートフォリオの将来価値:株価が450円に下落した場合

    原株の返済売り 450円 x 1単位 = 350円
    コールがOTM(権利行使されない) 0円 x 1.6364単位 = 0円
    合計 450円

    このように1.6364単位のコールをショートすることで、ポートフォリオは完全にヘッジされます。

    コールの適正価格

    ヘッジポートフォリオの現在価値は、原株1単位のロングとコール1.6364単位のショートでですから以下のようになります。 コールの適正価格はいくらでしょうか。

    ポートフォリオの現在価値

    原株のロング 900円 x 1単位 = 900円
    コールのショート $x$円 x 1.6364単位 = 1.6364$x$円
    合計 900円 - 1.6364$x$円

    ヘッジポートフォリオを満期(1年)まで安全金利(10%)で運用すると、将来価値は450円になると考えます。

    $(900円 - 1.6364x) (1.1) = 450円$

    $900円 - 1.6364x = \frac{450円}{1.1} $

    $1.6364x = 900円 - \frac{450円}{1.1}$

    $x = \frac{1}{1.6364}(900 - \frac{450円}{1.1}) = 299.993円$

    したがって、コールの公正価格は299.993円です。

    原株が800円のとき、コールの公正価格は218.18円でした。 株価がATM($ \varDelta = 0.5$)から100円上昇してIMT($\varDelta = 0.6111$)になると299.993円に値上がります。

    原株の上昇100円に対し、コールの公正価格は約81円の上昇です。非線形なオプション価格の特徴がここにも現れている。 原資産価格の値動きに対し、オプション価格がどのぐらい変化するのかを把握し、リスク管理を行う必要性を感じますね。

    原資産の現在価格が1000円の場合

    原資産価格の値動き

    現在1000円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:1000円 x 1.5 = 1500円
  • 下落の場合:1000円 x 0.5 = 500円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =1500円 - 500円 = 1000円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(1500-800, 0) = 700円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(500-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 700円 - 0円 = 700円

    原株が上昇した場合にはITMで、下降した場合にはOTMで終わるのは、900円のケースと同じです。

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみます。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{700円}{1000円} = 0.7$

    デルタは0.7となり、さらに1に近づいていっているのが分かります。

    ヘッジポートフォリオ

    デルタは0.7なので、現在価格1000円の原株1単位のロングに対し、1.4286単位のコールをショートすることになります。

    $ \frac{1}{\varDelta} = \frac{1}{0.7} = 1.4286単位$

    ポートフォリオの将来価値:株価が1500円に上昇した場合

    原株の返済売り 1500円 x 1単位 = 1500円
    コールがITM(権利行使される) -700円 x 1.4286単位 = -1000円
    合計 500円

    ポートフォリオの将来価値:株価が500円に下落した場合

    原株の返済売り 500円 x 1単位 = 500円
    コールがOTM(権利行使されない) 0円 x 1.4286単位 = 0円
    合計 500円

    このように1.4286単位のコールをショートすることで、ポートフォリオは完全にヘッジされます。

    コールの適正価格

    ヘッジポートフォリオの現在価値は、原株1単位のロングとコール1.4286単位のショートなので以下のようになります。 コールの適正価格はいくらでしょうか。

    ポートフォリオの現在価値

    原株のロング 1000円 x 1単位 = 1000円
    コールのショート $x$円 x 1.4286単位 = 1.4286$x$円
    合計 1000円 - 1.4286$x$円

    ヘッジポートフォリオを満期(1年)まで安全金利(10%)で運用すると、将来価値は500円になると考えます。

    $(1000円 - 1.4286x) (1.1) = 500円$

    $1000円 - 1.4286x = \frac{500円}{1.1} $

    $1.4286x = 1000円 - \frac{500円}{1.1}$

    $x = \frac{1}{1.4286}(1000 - \frac{500円}{1.1}) = 381.811円$

    したがって、コールの公正価格は381.811円となります。

    原株が800円のとき、コールの公正価格は218.18円であった。 株価がATM($ \varDelta = 0.5$)から200円上昇してIMT($\varDelta = 0.7$)になると381.811円に値上がりする。

    原株の上昇200円に対し、コールの公正価格は約164円の上昇となっています。

    原資産の現在価格が1100円の場合

    この辺りでまた面白い変化が見られます。

    原資産価格の値動き

    原株の現在価格が1100円ともなると、権利行使価格が800円なので、かなりのITMです。 現在1100円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:1100円 x 1.5 = 1650円
  • 下落の場合:1100円 x 0.5 = 550円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =1650円 - 550円 = 1100円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(1650-800, 0) = 850円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(550-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 850円 - 0円 = 850円

    原株が上昇した場合にはITMで、下降した場合にはOTMで終わるのは変わりません。

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみます。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{850円}{1100円} = 0.7727$

    デルタは0.7727となり、原株の上昇により1に近づいていってはいるが、その近づき方は鈍化しているようである。

    デルタの変化

    800円 0.5
    900円 0.6111 11%
    1000円 0.7 8.9%
    1100円 0.7727 7.3%

    ヘッジポートフォリオ

    デルタは0.7727なので、現在価格1100円の原株1単位のロングに対し、1.2941単位のコールをショートすることになります。

    $ \frac{1}{\varDelta} = \frac{1}{0.7727} = 1.2941単位$

    ポートフォリオの将来価値:株価が1650円に上昇した場合

    原株の返済売り 1650円 x 1単位 = 1650円
    コールがITM(権利行使される) -850円 x 1.2941単位 = -1100円
    合計 550円

    ポートフォリオの将来価値:株価が550円に下落した場合

    原株の返済売り 550円 x 1単位 = 550円
    コールがOTM(権利行使されない) 0円 x 1.2941単位 = 0円
    合計 550円

    このように1.2941単位のコールをショートすれば、ポートフォリオは完全にヘッジされます。

    コールの適正価格

    ヘッジポートフォリオの現在価値は、原株1単位のロングとコール1.2941単位のショートですから以下のようになります。 コールの適正価格はいくらでしょうか。

    ポートフォリオの現在価値

    原株のロング 1100円 x 1単位 = 1100円
    コールのショート $x$円 x 1.2941単位 = 1.2941$x$円
    合計 1100円 - 1.2941$x$円

    ヘッジポートフォリオを満期(1年)まで安全金利(10%)で運用すると、将来価値は550円になると考えます。

    $(1100円 - 1.2941x) (1.1) = 550円$

    $1100円 - 1.2941x = \frac{550円}{1.1} $

    $1.2941x = 1100円 - \frac{550円}{1.1}$

    $x = \frac{1}{1.2941}(1100 - \frac{550円}{1.1}) = 463.642円$

    したがって、コールの公正価格は463.642円です。

    原資産の現在価格が1200円の場合

    原株の現在価格が1200円になると、権利行使価格800円のコールの本質的価値は400円となります。

    max(S-K, 0) = max(1200-800, 0) = 400円

    本質的価値だけで権利行使価格の半分となり、オプション価格は決して安いものではありません。 現実の市場では、オプションがDITMの状態になると、本質的価値に近い価格水準(付帯価値が0に近い)で取引されることがよく起こります。

    オプション価格 = 本質的価値

    となっているようなオプションを「パリティー(parity)」と呼んだりします。

    原資産価格の値動き

    現在1200円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:1200円 x 1.5 = 1800円
  • 下落の場合:1200円 x 0.5 = 600円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =1800円 - 600円 = 1200円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(1800-800, 0) = 1000円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(600-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 1000円 - 0円 = 1000円

    原株が上昇した場合はITMで、下降した場合にはOTMで終わることに変化は見られません。

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみます。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{1000円}{1200円} = 0.8333$

    デルタは0.8333と計算できました。原株の上昇により1に近づいていってはいるが、はやりその近づき方は鈍化しているようです。

    デルタの変化

    800円 0.5
    900円 0.6111 11%
    1000円 0.7 8.9%
    1100円 0.7727 7.3%
    1200円 0.8333 6%

    この「鈍化」は何を意味しているのでしょう。 それは、デルタが1に近くなると、相場が予想通り上昇しても、ATMの時ほどコールの価格は急上昇しないということです。 ITMが深いオプションほど、大きな価格変動による利益は期待できないということでもあります。

    ヘッジポートフォリオ

    デルタは0.8333ですから、現在価格1200円の原株1単位のロングに対し、1.2単位のコールをショートすることになります。

    $ \frac{1}{\varDelta} = \frac{1}{0.8333} = 1.2単位$

    ポートフォリオの将来価値:株価が1650円に上昇した場合

    原株の返済売り 1800円 x 1単位 = 1800円
    コールがITM(権利行使される) -1000円 x 1.2単位 = -1200円
    合計 600円

    ポートフォリオの将来価値:株価が600円に下落した場合

    原株の返済売り 600円 x 1単位 = 600円
    コールがOTM(権利行使されない) 0円 x 1.2単位 = 0円
    合計 600円

    このように1.2単位のコールをショートすれば、ポートフォリオは完全にヘッジされます。

    コールの適正価格

    ヘッジポートフォリオの現在価値は、原株1単位のロングとコール1.2単位のショートでですから以下のようになります。 コールの適正価格はいくらでしょう。

    ポートフォリオの現在価値

    原株のロング 1200円 x 1単位 = 1200円
    コールのショート $x$円 x 1.2単位 = 1.2$x$円
    合計 1200円 - 1.2$x$円

    ヘッジポートフォリオを満期(1年)まで安全金利(10%)で運用すると、将来価値は600円になると考えます。

    $(1200円 - 1.2x) (1.1) = 600円$

    $1200円 - 1.2x = \frac{600円}{1.1} $

    $1.2x = 1200円 - \frac{600円}{1.1}$

    $x = \frac{1}{1.2}(1200 - \frac{600円}{1.1}) = 545.454円$

    したがって、コールの公正価格は545.454円となります。

    原資産の現在価格が1300円の場合

    原資産価格の値動き

    現在1300円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:1300円 x 1.5 = 1950円
  • 下落の場合:1300円 x 0.5 = 650円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =1950円 - 650円 = 1300円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(1950-800, 0) = 1150円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(650-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 1150円 - 0円 = 1150円

    原株が上昇した場合はITMで、下降した場合にはOTMで終わることに変化は見られません。

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみます。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{1150円}{1300円} = 0.8846$

    デルタは0.8846と計算できました。原株の上昇によりデルタはさらに1に近づき、そのスピードは鈍化している。

    原資産の現在価格が1400円の場合

    原資産価格の値動き

    現在1400円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:1400円 x 1.5 = 2100円
  • 下落の場合:1400円 x 0.5 = 700円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =2100円 - 700円 = 1400円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(2100-800, 0) = 1300円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(700-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 1150円 - 0円 = 1150円

    原株が上昇した場合はITMで、下降した場合にはOTMで終わることに変化は見られません。

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみます。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{1300円}{1400円} = 0.9286$

    デルタは0.9286と計算できました。

    原資産の現在価格が1500円の場合

    これまでの傾向からデルタは0.93以上が予想されます。 このレベルになると権利行使価格800円のコールはDITMと判断されるでしょう。

    原資産価格の値動き

    現在1500円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:1500円 x 1.5 = 2250円
  • 下落の場合:1500円 x 0.5 = 750円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =2250円 - 750円 = 1500円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(2500-800, 0) = 1450円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(750-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 1450円 - 0円 = 1450円

    原株が上昇した場合はITMで、下降した場合にはOTMで終わることに変化は見られません。

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみます。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{1450円}{1500円} = 0.9667$

    デルタは0.9667と計算できました。

    原資産の現在価格が1600円の場合

    原資産価格の値動き

    現在1600円の原株は、1期間の2項モデル(上昇:+50%、下落:-50%)に従うと、満期において以下の2通りの値を取ります。

  • 上昇の場合:1600円 x 1.5 = 2400円
  • 下落の場合:1600円 x 0.5 = 800円
  • 原資産価格の値動き = 上昇価格 - 下落価格 =2400円 - 800円 = 1600円

    オプション価格の値動き

    2通りの株価に対するコールの価値は以下のようになります。ただし、Sは株価、Kは権利行使価格(800円)です。

  • 上昇の場合:max(S-K, 0) = max(2400-800, 0) = 1600円
  • 下落の場合:max(S-K, 0) = max(800-800, 0) = 0円
  • オプション価格の値動き = 原株上昇の価格 - 原株下落の価格 = 1600円 - 0円 = 1600円

    原株が上昇した場合はITMでこれまでと同じですが、下降した場合にはATMとなりました。

    デルタの計算

    それぞれの値動きが確認できたので、デルタを計算してみます。

    $ \varDelta = \frac{オプション価格の値動き}{原資産価格の値動き} $

    $ \varDelta = \frac{1600円}{1600円} = 1$

    デルタは1と計算でき、遂に1に到達しました。1700円と1800円の計算はすでに終わっています。 まとめに入りましょう。

    まとめ

    原資産価格 マネーネス デルタ 変化
    400円 OTM 0
    500円 OTM 0
    600円 OTM 0.16667
    700円 OTM 0.3571 0.19043
    800円 ATM 0.5 0.1429
    900円 ITM 0.6111 0.1111
    1000円 ITM 0.7 0.0889
    1100円 ITM 0.7727 0.0727
    1200円 ITM 0.8333 0.0606
    1300円 ITM 0.8846 0.0513
    1400円 ITM 0.9286 0.044
    1500円 ITM 0.9667 0.0381
    1600円 ITM 1 0.0333
    1700円 ITM 1
    1800円 ITM 1

    権利行使価格を800円に固定し、現在価格を変化させることでコールのデルタがどのよう影響を受けるかを見てきました。

    繰り返しになりますが、原資産価格の動きとデルタは線形の関係に無いこと。そして、DITMに向かってデルタの上昇は鈍くなっていくことが分かりました。

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