2021年11月27日
グリークスの売買
金利と配当を無視できる場合、同じ権利行使価格のコールとプットの
- ガンマ
- セータ
- ベガ
は等しくなる。 これはタイプ(ヨーロピアン型、アメリカン型)を問わない。 オプションを売買する利点はこの3つを取引できることにあると言えるだろう。
ロング
原資産が動くと考えるときはオプションを買って、ガンマとベガをロングする。 ガンマとセータは表裏一体なので、この際はセータを支払うことになる。
ショート
原資産が安定すると考えれば、オプションをショートすることでセータを稼ぐことができる。 ガンマとベガをショートすることになるので、実際に原資産が大きく動く、もしくは市場参加者の多くが動くと考える(IVの上昇)ことになれば、含み損となる。
同じ役割を果たす
3つのグリークスの売買はデルタが損益に与える影響を排除することが前提となる。 デルタ・ニュートラルは原資産を取引することでも可能だ。
金利と配当を無視できる場合、同じ権利行使価格のコールとプットのガンマ、セータ、ベガは同じで、唯一異なるデルタも原資産で中和が可能だとすれば、コールとプットは同じ役割を果たすことになる。
保険としてプットを買う
100ドルの株を100株買い、株価下落への備えとして80プット(multiplyer:100)を1つ買ったとします。 そして、この時の80プットのデルタは-0.1で、プレミアムが1ドルだったと仮定します。
デルタ
株式 | +1 x 100 = +100 |
プット | -0.1 x 100 = -10 |
Total | +90 |
株価が70ドルまで下落して、80プットのプレミアムが14ドルまで上昇したとすると、損益はどうなるでしょうか。
損益
株式 | (70 - 100) x 100 = -3000 |
プット | (14-1) x 100 = 1300 |
Total | -1700 |
プットを保険として買っていたことで、本来-3000ドルの損失となるところ、-1700ドルの損失で済んだことになります。
保険としてコールを買う
コールとプットが同じ役割を果たすなら、コールを買っても同じ結果となるはずです。
80プットの代わりに80コールを買います。 80プットのプレミアムは1ドルだったので、金利配当が無い場合の「プットコールパリティー」により、80コールのプレミアムは21ドルと分かります。
$$ C - P = S - K$$ $$ C = S - K + P = 100 - 80 + 1 = 21$$
デルタについては、80プットが-0.1だったので、80コールは+0.9です。 このままでは株のデルタと合わせると+190となってしまい、ポートフォリオのデルタが異なってしまいます。
デルタ
株式 | +1 x 100 = +100 |
コール | +0.9 x 100 = +90 |
Total | +190 |
この調整には株式を売ることで対応します。 100多くなってしまっているので100株売る、つまり、株のロングを0とすることでつり合いが取れます。
デルタ
株式 | +1 x 0 = 0 |
コール | +0.9 x 100 = +90 |
Total | +90 |
株が70ドルまで下落して、80プットは1ドルから14ドルに値上がりしました。この時、80コールのプレミアムは4ドルまで下がっているはずです。
$$ C = S -k + P = 70 - 80 + 14 = 4$$
損益
株式 | |
コール | (14 - 21) x 100 = -1700 |
Total | -1700 |
株の損益は発生せず、コールの損益のみとなるので-1700ドルです。これは保険としてプットを買った場合の結果と同じとなります。