ボラティリティを分解する。
2021年12月5日
フォワード・ボラティリティ
長期のオプションほど低いIVを持つダウンワード(Downward)のタームストラクチャーになっていたとする。
ATMのIV
限月 | 残存日数 | IV |
Jan | 20日 | 25% |
Feb | 40日 | 23% |
Mar | 59日 | 21% |
Apr | 83日 | 19% |
May | 103日 | 17% |
実際のオプションマーケットがこのような構造をとることはない。 「ホライゾンタル・スキュー(Horizontal Skews)」がある状態であり、いずれ是正される。
ボラティリティを分解する
ボラティリティ | 年換算した連続複利リターンの標準偏差 |
標準偏差 | 分散の平方根 |
分散 | 平均との差を2乗したものの合計 |
ボラティリティは「年率換算した連続複利市ターンの分散の平方根」ということになる。 分散(Variance)は、バラつきの蓄積に過ぎないので、足し算と引き算ができるのがポイントだ。
ボラティリティ($\sigma$)を2乗してバリアンスに変換し、満期までの期間($T$)を掛けると、満期までのバリアンス($\sigma ^2 T$)が得られる。
1月限オプションのIVは25%で期間が20日なので、現在から1月満期までのバリアンスは、
$$ (0.25)^2 \times \frac{20}{252} $$
となる。
同様に、現在から2月満期までのバリアンスは
$$ (0.23)^2 \times \frac{40}{252} $$
となる。
この2つのバリアンスの差は、1月限満期から2月限満期までのバリアンスを表す。
$$ (0.25)^2 \times \frac{20}{252} - (0.23)^2 \times \frac{40}{252} = 0.00344 $$
このようにして、各期間のバリアンスと求めると以下のようになる。
Variance
限月 | 残存日数 | IV | 満期までのVar | 各期間のVar |
Jan | 20日 | 25% | 0.00496 | 0.00496 |
Feb | 40日 | 23% | 0.00839 | 0.00344 |
Mar | 59日 | 21% | 0.0103 | 0.00193 |
Apr | 83日 | 19% | 0.0119 | 0.00157 |
May | 103日 | 17% | 0.0118 | -0.00008 |
各期間のバリアンスを年率換算し、その平方根をとったものを「フォワード・ボラティリティ」と言う。 FVは将来のある期間におけるボラティリティを表す。
1月限満期日から2月限満期日までのFVの計算は以下のようになる。
$$ FV_{1-2} = \sqrt{\left( (0.23)^2 \times (\frac{40}{252}) - (0.25)^2 \times (\frac{20}{252} )\right) \times (\frac{252}{40 -20})} = 20.08 $$
FV
限月 | 残存日数 | IV | 各期間のVar | FV |
Jan | 20日 | 25% | 0.00496 | 25% |
Feb | 40日 | 23% | 0.00344 | 20.8%% |
Mar | 59日 | 21% | 0.00193 | 16% |
Apr | 83日 | 19% | 0.00157 | 12.8% |
May | 103日 | 17% | -0.00008 |
4月限満期から5月限満期までのバリアンスは-0.00008で、マイナスの値をとっており、この期間のFVは計算できない。 バリアンスはその性質上マイナスの値をとることは無い。
- 4月限のオプションを売り
- 5月限のオプションを買う
Apr/mayのカレンダー・スプレッドをロングすれば、4月限から5月限までのFVを無料もしくはマイナスコストでロングできる。
この結果、4月限のオプションは売られてIVが低下し、5月限のオプションはIVが上昇し、限月間の歪みは是正される。
FVを計算し、ある期間のFVが前後の限月のFVに比して歪みがある場合、トレードチャンスとなる。