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グリークスの扱い

グリークスをスプレッド、ポジション、ポートフォリオにまとめる。


2021年12月3日

損益の見積もり

オプショントレーダーはポジションのグリークスから、自らの抱えるリスクの大きさを見積もる。

  • 原資産価格が〇〇ドル変動したら
  • 何事も無く〇〇日経過したら
  • ボラティリティが〇〇ポイント変動したら
  • 上はデルタとガンマ、真ん中はセータ、下はベガに対応する。

    それぞれのオプション(レッグ)は固有のグリークスを持つ。 通常は、それらをひとまとめにしたスプレッド単位、もしくはスプレッドをまとめたポジション単位で管理される。

    レッグのグリークス

    各レッグのデルタ($ L_\delta $)は以下のように計算できる。

    $$ L_\delta = \delta \times Multiplier \times Lot $$

    デルタが0.35のオプションをを10枚(単位)買った場合、乗数が100なら、

    $$ L_\delta = 0.35 \times 100 \times 10 = 350 $$

    レッグのデルタは凡そ350となる。

    スプレッド・ポジションのグリークス

    ガンマ、セータ、ベガについても同様の計算を行い、それぞれ単純に足し算することでポジションのグリークスが計算できる。

    ポジション全体のグリークスが以下のようだったとして、損益の見込みを考えてみる。

    $ P_\delta $ +500
    $ P_\gamma $ +350
    $ P_\theta $ -250
    $ P_v $ +300

    65ドルで取引されていた原資産が下落して62ドルで取引が終了し、IVが1.5ポイント上昇した場合、ポートフォリオの価値はどう変化するか。

    デルタ

    デルタを由来とする損益は、単純にデルタに原資産の変化分を掛けたものとなる。

    $$ P_\delta = +500 \times (-3) = -1500ドル $$

    ガンマ

    ガンマを由来とする損益は以下の式を用いて計算できる。

    $$ (\delta + \frac{1}{2}\gamma \Delta S) \times \Delta S - \delta \times \Delta S = \frac{1}{2} \gamma (\Delta S)^2 $$

    $$ P_\gamma = \frac{1}{2} \times 350 \times (-3)^2 = 1575ドル $$

    セータ

    セータを由来とする損益は、セータの値そのままとなる。

    $$ P_\theta = -250ドル $$

    ベガ

    ベガを由来とする損益は、変動したIVにベガ値を掛けたものになる。

    $$ P_v = 300 \times 1.5 = 450 $$

    トータルの見積もり

    $$ P = P_\delta + P_\gamma + P_\theta + P_v = 275 $$

    原資産価格の3ドルの下落と1.5ポイントのIVの上昇によって、ポジションの価値は約275ドル増加すると見積もることができる。

    グリークスの規格化

    同一の原資産を持つオプションのグリークスは1つにまとめて管理ができる。 しかし、原資産を異にするオプションのグリークスは単純には合算できない。

    デルタは数学的には以下のように表現できる。 原資産価格が単位価格(1ドル)動いた時に、オプション価格がどのぐらい変化するかを表す。

    $$ \delta = \frac{\partial O}{\partial S} $$

    100ドルの株Aが99ドルになるのも1ドルの変化であるし、1000ドルの株Bが999ドルになるのも同じく1ドルの変化である。 しかし、これを変化率で考えると、前者は1%の変化であるのに対し、後者は0.1%の変化に過ぎない。

    デルタ

    株価が100ドルのA株と株価が1000ドルのB株では、デルタ値が同じでも意味合いは異なる。 双方共に$ P_\delta = 100 $だったとして、1%の下落が発生した時のインパクトは10倍違う。

    1%の下落 損益
    A株 100 → 99 100 x (-1) = -100
    B株 1000 → 990 100 x (-10) = -1000

    デルタを「ドル・デルタ($ \text{\textdollar} \delta$)」に換算することで、原資産の異なるオプションを一律に扱うことができる。 ドル・デルタは、デルタと原資産価格の掛け算で求まり、「ポジションの大きさ」を表す。

    デルタ x 原資産価格 $ \text{\textdollar} \delta $
    A株 100 x 100 10,000
    B株 100 x 1000 100,000

    原資産価格が〇〇ドル下落したといったように実数で変化を捉えるのではなく、変化率で捉えることになる。 A株の$ \text{\textdollar} \delta$は10,000なので、1%の変動は損益を100上下させる。

    ガンマ

    ガンマは、「原資産価格が単位価格(1ドル)上昇したときに、デルタがどれだけ上昇するのか」を表す。

    $$ \gamma = \frac{\partial \delta}{\partial S} $$

    双方共に$ P_\gamma = 100 $だったとしても、株価が100ドルのA株と株価が1000ドルのB株では、ガンマ値の意味合いは異なる。

    A株にとっての1ドルは1%に相当するが、B株にとっての1ドルは0.1%に過ぎない。 ガンマもパーセンテージで見るほうが実用的である。

    A株(100ドル)にとっての1%の変化は1ドルに相当する。+1%の変化によってA株のデルタの変化($ \partial \delta $)は100となる。

    $$ \partial \delta =\gamma \times \partial S = +100 \times 1 = +100$$

    したがって、A株のドル・デルタ($ \text{\textdollar} \delta $)は、

    $$ \text{\textdollar} \delta = S \times \delta = 100 \times +100 = +10,000ドル $$

    変化することになる。つまり、A株にとっての$ P_\gamma = 100 $の意味は、A株が±1%動いたときに、「ポジションの大きさ」が±10,000ドル分変化するという意味になる。

    この値をドル・パーセント・ガンマ($\text{\textdollar}$%$\gamma $)と呼ぶ。

    $$ \text{\textdollar} % \gamma = (S \times 0.01 \times \gamma) \times S $$ $$ \text{\textdollar} % \gamma = S^2 \times 0.01 \times \gamma $$

    B株(1000ドル)にとっての1%は10ドルで、1%の値動きによってデルタは1000変化することになる。

    $$ 100 \times 10 = 1000 $$

    したがって、ドルデルタは100万ドルとなる

    $$ 1000 \times 1000 = 1,000,000ドル$$

    つまり、B株にとっての$ P_\gamma = 100 $は、B株(1000ドル)が±1%動いた時に、「ポジションの大きさ」が100万ドル分も変化するという意味を持つ。

    セータとベガ

    これらは原資産価格の大きさが違くとも同じように扱うことができる。

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