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【書評】「ツキの法則」谷岡一郎著

本書はギャンブルを科学する。エセ科学ではなく本物の科学だ。 そこから導き出される「確実に負ける方法」は、反面教師として相場や日常生活にも活かせるだろう。

ツキの法則 「賭け方」と「勝負」の科学

この本の初版は1997年で、もう20年以上も前のものだ。 だから内容的にちょっと古臭いところもあるが、本質的な話は現在でも有効であることに変わりない。 それだけではなく、当時の世相を語った部分も相変わらずだったりするのだ。

本書の冒頭は「宝くじ」の話からはじまる。 テレビをほとんど見なくなって久しいが、それでも時々テレビをつければコマーシャルの嵐に見舞われることになる。

その中でも特に目立つのが「宝くじ」のCMである。有名タレントを起用してカジュアルな演出がなされ、そこには宝くじの持つダーティーなイメージは微塵もない。 大金を投じてそうなるようにCMを作っているのだから、当然なのかもしれない。

本来宝くじの収益は地方や国の行政が公共のために使うべきものであり、この種の広告を出すためのものではない。 ちなみに所得レベルの低い層がより多くの宝くじを買い、従ってより多くの「目に見えない税金」を支払っていることは厳然たる事実である。 その逆進性たるや消費税も真っ青となるほどである。(P22)

20年以上前からこういった厳しい意見を言う人もいたのに、残念ながら見えにくい悪いところというのは中々良くはならないのだろう。

令和元年度の宝くじの売り上げは7931億円で、当選金として支払われたのが3684億円だから、 1年間で4000億円以上の「目に見えない税金」が巻き上げられたことになる (参考:宝くじ公式サイト)。あのCMも大活躍である。

恐ろしいのは、「所得レベルの低い層がより多くの宝くじを買い」の部分だ。この主張にはしっかりと論文が根拠として示されている。

イギリスのマンティング教授(An economic and social history of gambling in Britain and the USA, 1996)も指摘するように、 教育を充分に受ける機会に恵まれなかった人々、そしてその結果として所得レベルが平均より低い人々にその傾向が強い。 だとすれば、この広告の犠牲になっているのは、社会的弱者であるとも言えるのである。(P22)

知らないからそこに付け込まれるわけで、逆に言えば 知っていれば防ぐことができる のだ。 ならば、自己防衛のためにも学ばねばなるまい。

オッズに合う

当たり前だが、宝くじの期待値はマイナスだ。つまり、オッズに合わないのだから、宝くじなんか買わない方が良い というのが理性的な答えとなる。 やっかいなのは、「当たるかもしれない」という事実である。

これが宝くじを買う派の伝家の宝刀で、これを抜かれると非常にやっかいだ。 当たる確率が極めて低いことを数字で示しても、「でも、ゼロではないんでしょ?」とくる。 期待値を示しても、「当たればプラスでしょ?」と返される。挙句の果てには「夢を買っているのだ!」と言い出す。 こうなるともう、勝手にしてくれとしか言えないのだ。

ややもすると人は感情的な判断を下しがちだ。だからこそ、「オッズに合う」という考えが重要になるのだ。

確実に負ける方法

さて、本書で紹介されるのは、ギャンブルで「確実に勝てる方法」ではなく 「確実に負ける方法」 だ。 普通知りたいと思うのは前者なのだが、そんなものは存在しないので紹介のしようが無いのだ。

もし必勝法が存在するならギャンブルはギャンブルたりえない。 胴元が大数の法則により確実に利益を得られるからこそ、賭けの場が維持されギャンブルとして成立するのだ。 期待値90%のギャンブルであれば、10%が胴元の利益で、これを控除率と呼ぶ。 ちなみに、宝くじの期待値は46.5% である。極悪!

つまり、ギャンブルというの本質的に期待値がマイナスなのだ。そんなゲームにおいて、確実に負ける方法は、

  • 回数を増やす
  • 同じ金額を賭ける
  • 本命狙いに徹する
  • スキルの必要なゲームに参加する
  • であると著者は言う。これらの内容が気になったなら本書を手に取ってみると良いだろう。 この逆をやることが、「まだましな賭け方」となる。

    私としてはこの後に続く第4章の「破滅型ギャンブラーとゆとり型ギャンブラー」の話も興味深かった。 破滅型とは相場で言うところの正に「損小利大」の真逆のプレイヤーなのだ。

    相場への応用

    トレーダーは、相場をギャンブルではない言う。これは期待値が100%を越えていると考えていることに他ならない。

    もし期待値が100%を下回っており、上の「確実に負ける方法」を実践すれば、その行く末は火を見るよりも明らかだろう。

    逆に、自らの理論を構築し、そこに手法を重ねて100%を超える期待値を実現できれば、後は大数の法則が効いてくるまで試行を続けるだけだ。

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