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静の日、動の日

動く日なのかどうか


2022年7月29日

易と相場

チャートのことを日本では「ケイ線」と呼んでいました。 漢字にするなら「罫線」が思い浮かびますが、私は「卦線」じゃないかと思っています。

ローソク足の始値より終値の方が高いものを「陽線」と言います。「上昇線」でも良い気がしますが、伝統的に「陽」の字が使われています。 逆も同じで、「下降線」ではなく「陰線」です。

陰陽と言えば、中国の古い書物である「易経」にたどり着きます。 「当たるも八卦、外れるも八卦」のアレです。 「卦」とは諸々の事象の象徴(パターン認識)で、固定したものではなく、流転するものです。

チャートを「陰陽(卦)の流れを時系列に表したもの」と考えるなら「卦線」の字がぴったりとなります。 易の思想が相場の世界でも通用すると昔の相場師は考えたのではないでしょうか。

かくいう私も易が相場に役立つと考えている一人です。 易と言えば占いと考えるのが普通だと思いますが、私は占いにまったく興味がありません。 その哲学、考え方に興味を引かれるのです。

相場をやる方が易に触れれば、「相場そのものやんけ」と思うんじゃないでしょうか。 私がやっている相場のパターン分析も易のパクリだと気づくはずです。

陰陽と相場

陰陽とは何ぞやということですが、陰は統一含蓄、陽は発現分化を象徴したものです。 相場で言えば、移動平均線の収束が陰、拡散が陽にあたるというのが分かりやすいかなと思います。

➡ Equally Spaced MA

収束により力を貯めて、貯めた力を解放することで拡散します。 力の拡散が終わったら、また力を貯めるフェーズに移行…。このようなことが終わることなく繰り返されていくのが相場です。 これはチャートを見れば明らかですから、言いきっちゃっても良いでしょう。

相場が大きく動くのは「陽の日」です。これだと「陽線」の「陽」の字と被って紛らわしいので「動の日」と表現することにします。 相場が大きく動かない日は「静の日」とします。

相場を日単位で見れば、動の日の前日は静の日となるはずです。 もし動の日が続く場合、それは一連の拡散が進行しているのであり、その起点の前日を確認すれば静の日になっているはずです。

これは日を2つに分類しただけなので当たり前の話。 申し上げたいのは、静から動に変わるタイミングこそ、トレーダーが気合を入れて臨まなければいけない状況だということです。

相場が動かないからと言ってやる気を無くしてしまうのではなく、状態の変化に目を光らせるのが大事ということですね。 四六時中、目を光らせていては身が持ちませんので、ある程度の見通しを立てられるスキルも重要となります。

静と動の判断

チャートの分析はリアルタイムで行うのが難しいだけで、過去のチャートについて行う分には簡単です。 前日に価格が大きく一方向に動いていれば「動の日」、動いていなければ「静の日」と考えれば良いでしょう。 上昇したか下落したかは静と動の判断には関係ありません。

ZIGZAGを構成する1つ1つの波に値幅があっても、重複部分が多ければ一方向に大きく動くことはありません。 判断に迷うときは移動平均線の拡散と収縮を参考にします。

前日が「動の日」であれば、それが本日も続くのかが重要なポイントになります。 前日が「静の日」であれば、どういう動きになれば静から動へ状態変化したと見なせるのかを検討しておくことが重要です。

基本

ここからは私の個人的な手法に寄った話になります。 符号を使うので、興味のある方はサイドバーにリンクのある「トレード日記の説明書」を参考にしてください。 話を分かりやすくするために具体的な状況を想定します。

  • 013MATL-065MAは完全に収束している
  • 065MATL-195MAは収束が進行している
  • サイクルが「上」で揃った

上昇に対する調整局面で、このような状況にどう対処すべきかという話です。 長い時間軸で収束が進行しているのだから「静の日」を前提にトレードプランを組むことになります。 以後、この前提はめったなことでは変えません。

買うためには065-195の収束を否定する必要があるので、価格が065MAの上に出ることは絶対です。 ただし、サイクルが揃って且つ065MAの上に出たとしても、調整未完了での動き出しなので成功する可能性は低いと考えます。 なぜなら「静の日」だからです。

したがって、本当に動くか疑ってかかる必要があります。現在は013以下が完全に収束しているのですから、

反応したMAが支持抵抗線として機能するのを確認して着いて行く

ぐらいの用心深さがあってもよいでしょう。これはMATLが完全収束しているときのもっとも基本的な定跡です。

わざわざ可能性の低い動き出しにベットする必要はありません。 調整不足の状態でも動き出せるのなら、非常に強いと言えます。 動き出しは見送り、この定跡に従って行動しても遅いということはないはずです。 パターンで言えば、005もしくは013のTUが有力となります。

この定跡は「静から動への変化」を捉えるためのもので、この条件が満たされれば「静の日」という前提を変更することが許されます。 根拠が無いのに雰囲気で前提を変えてしまうことは厳禁です。

反応したMAが支持線として機能しなかった場合は「何もしない」が正解となるのは言わずもがなでしょう。

  • 動の日
  • サイクルの一致
  • ここまでをまとめますと、エントリーの条件はこの2つになります。 サイクルが揃うと一口に言っても、自然な流れで綺麗に揃うケースだけではなく、強引な動きで無理やり一致させるケースもあるわけです。 後者の場合は叩かれる原因ともなります。

    静から動への状態変化が否定されて、やっぱり静が継続となったときに、こういったダマシが発生します。

    応用

    「静の日」は調整日とも言い換えが出来ます。 そして、調整には「価格」と「時間」の2種類があります。

    価格の調整

    まず「価格の調整」ですが、これもまた「反トレンドの動き」と言い換えが可能です。 「各時間軸のサイクルが示す方向が一致すること」をエントリーの条件にしているのは、反トレンドの動きに安易に乗らないようにするためです。

    つまり、基本に従っているだけでは「調整日は見ているだけ」になります。 トレンドに乗ることを主眼とすればこれで良いわけですが、反トレンドの動きも狙い、トレードの試行回数を増やすためには応用が必要になります。

    反応したMAが支持抵抗線として機能しないのを確認して叩く

    基本編と同じ状況で考えるなら、上に反応した短い足のMAを割る動きを狙うことになります。 「静の日」を前提としているのだから、「上への動き出しは失敗する」という見込みが立ちます。 そのシナリオに対応するためのアクションです。

    中途半端な位置で005-013のRダブルとなったところから、上に反応したMAを割る動きになれば狙い目です。 これが065MAを割る動きに繋がれば、そこそこの利益が見込めます。

    時間の調整

    次に「時間の調整」です。 長い時間軸で見ればヨコヨコの動き、短い時間軸で見ればZIGZAGが見て取れるが波の値幅は小さいといったケースです。

    「静の日」であり、それが「時間の調整」となって現れる日になります。 こういった状況ではどうしてもリスクとリターンの比率が悪くなるので、「見」に徹するのが得策です。

    はじめから「時間の調整」になると分かっていれば相場から離れるのが一番ですが、「どうなるか分からない」というのがいつもの大前提。 ですので小さな根拠を積み上げて対応することになります。 例えば、「上昇2波よりは、上昇4波の方がヨコヨコになる可能性は高い」などがこれにあたります。

    既に静の状態になっていて、もうしばらく静が継続すると考えるなら、朝一の動き出しは叩くことも考えても良いかもしれません。 「ブロードニング・フォーメーション」になることは稀なので、その後は当日のトレンドを確認してからでも良いでしょう。

    静の日、動の日

    相場の動きの全てに対応しようとするのは無理があります。 ですから、狙いを絞って、待ち構えることを推奨します。 特別な才能をお持ちの方以外にとっては、しっかりと準備をし、事前に作成したトレードプランに従って行動するのが王道です。 臨機応変ダメ絶対。

    そのトレードプランの土台とも呼べるものが「静の日」と「動の日」の判断です。 この違いによりアクションが真逆にもなるのですから、重要度はかなり高いと言えるでしょう。 ここがブレると感情的なトレードに陥りやすくなるので、判断基準を明確にしておく必要があります。

    最後につまらない小咄を。

    猟師が獲物の通り道に銃口を向け、じっと獲物が来るのを待ち構えます。 天候が悪く、条件が整っているとは言えない状況です。 それでも猟師は諦めることなく獲物を狙いました。

    やはりと言うか何と言うか、その日は待てども暮らせども獲物は現れませんでした。 ずっと緊張感を保っていた猟師はさぞや疲れたことでしょう。 そして、獲物はゼロです。

    翌日も猟師は諦めずに獲物を狙います。 そして、長く待ったかいもあり、ようやく獲物が現れました。 トリガーに指をかけ、引き金を引く瞬間を見定めます。 しかし、獲物はすんでのところで進む方向を変えてしまったのです。

    獲物が捕れなければ食い扶持は稼げません。銃を撃たなければ決して獲物が捕れることはありません。 焦りもあったのでしょう。 猟師は自らの仕事を獲物を捕ることではなく、銃を撃つことと勘違いしてしまったようです。

    想定していたルートから獲物が外れたにも関わらず、次のチャンスを待てなかった猟師は銃をぶっぱなしたのでした。 おしまい。

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