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トレードプランの作成

場が開く前に作成しておくトレード計画の話。


2021年7月11日

相場の勉強の目的

「動く!」と思って飛び乗ったらダマシだった。用心深く初動を見送ると、そのまま突っ走る。 「今度は乗り遅れないぞ」と考えて素早く動いたがダマシだった。 安易に動かずエントリーを自重した結果、逆行してほっとする。さすがにこの動きは伸びるだろうと考え参戦するが伸びなかった。

相場の勉強を始めるとこんな事態に陥ります。完全な初心者だった時より知識は増えているはずなのに、勝率は悪化する。不思議です。

ここで「相場から手を引く」か「諦めずにもっと勉強する」かの2択になります。 相場の技術を身に着ける選択をすると次のステージに進むわけですが、さっそくここに大きな落とし穴があります。

それは勉強の目的を誤ってしまうことです。多くの人は「エントリーの精度を上げる」ことを目標にしてしまいがちです。 勉強をいくらしたってエントリーの精度はそれ程上がりません。 相場上級者だって普通に負けるのです。それでも、上級者は利益を得ます。

相場の勉強は「トレードで利益を得る」ためにすることです。 「エントリーの精度を上げる」はその手段の1つであって、最短距離を進めるような気がしますが、非常に困難な道のりになります。

相場の動きに臨機応変に対応できる人ならいざ知らず、普通の人がまず目指すべきは「精度の高いトレードプラン」を作成できるようになることです。

トレードプランが必要な理由

どういったトレードを行うかを「事前」に決めておくものがトレードプランです。

相場の値動きはメンタルに強烈な影響を与えます。 冷静さを維持することは難しく、その場その場の状況に臨機応変に対応することは非常に困難です。

だから、事前に計画を立てて、エントリーの決断をする時に発生する脳への負担を減らすことを考えます。 特にデイトレードの場合、判断するまでに与えられる時間は極僅かなので、トレードプランの重要性は増すことになります。

脳への負担は最小限に

理想的なのは、トレードの判断が「子供でも分かる数字の問題」になっていることです。 50と60はどっちが大きい?60ですね。じゃあ、50と40はどっちが大きい?50ですね。 このレベルです。

裏でやっているのは、「50という抵抗線を超えたから買い」や「まだ50という抵抗線を越えていないから待機」といった判断になります。

50がどういう意味を持つのかを考えるのは、トレードプランを作成する段階で行うことです。 リアルタイムでは、数字の持つ意味合いは頭の片隅に置き、先ほど挙げたような「50と60はどっちが大きい?」という極簡単な問題に取り組みます。

アホらしいと思うかもしれませんが、値動きに踊らされ冷静さを欠いた状態や、時にはパニックに陥ったとしても、 絶対に間違いのない正解を出せるのはこの程度なのです。(少なくとも私は)

プランとルール

相場の状況は刻刻と変化します。事前に作成したプランだけで対応しきれるものではありません。そこでプランに加えてルールが必要になってきます。

これらは車で言う両輪で、どちらも欠かせないものです。イメージとしては、プランで決めた枠の中で、ルールに基づいて行動するといった感じです。 それらの土台に、理論が位置します。

理論には深い理解と信頼が必要です。そして、日々研鑽を重ね徐々に進化させていくものです。 この理論に沿った形でルールが策定されます。こちらも急に変化するものではありません。 一方、トレードプランは日々新たに作成するものですから、その日によって内容はまったく異なります。

トレードプランの構成要素

先ほどは、エントリーをするかしないかの話でしたが、トレードプランに含まれるものはエントリーだけではありません。 当然、イグジットの判断(利益確定、損切り)なども含みます。

  • 買うのか売るのか
  • どうなったらエントリーするのか
  • どうなったらイグジットするのか
  • 少なくともこの3つは絶対に必要で、後はポジションサイズや建玉操作など、その人の手法によって色々と肉付けされます。

    エントリー方向

    最初のステップは、以下の3つの中から基本方針を決めることです。

  • 買いを考える
  • 売りを考える
  • 何もしない
  • 相場は個々のトレーダーの都合などお構い無しです。個人トレーダーが出来るのは相場に自分の行動を合わせることだけ。 したがって、自らの手法に合わない状況であれば、「何もしない」が正しい選択肢となります。相場は自分の手法に合わせて動いてはくれません。

    知識無くして、相場の状況を判断し適切なアクションを選択することはできませんから、相場の勉強(主にチャートの見方)がここに活きてきます。

    「買いを考える」のは、買いで利益を得られる可能性が高い状況です。 上昇する可能性が高いと混同しやすいので注意してください。この辺りは期待値という視点で考えられるようになると理解できると思います。

    とは言え、上昇するだろうとか下降するだろうといった予想は必要です。 この見込みの精度向上は、知識と経験によって成されます。 1つ1つの知識の貢献は小さくとも、それらを積み上げることで、判断材料とします。

    客観的に

    相場を分析するときは、「大から小」と「小から大」の2つの視点を持つことが大切です。

  • 大きな流れの中で、現在どのような状況にあるのか
  • 直近の値動きが、大きな流れにどのような影響を与えるのか
  • 1つの視点からだと、どうして近視眼的になり、主観が生まれやすくなります。 5分足チャートと日足チャートでは、同じ銘柄であってもまったく受ける印象が異なったりするものです。 複数の時間軸で相場を捉えることは、「自分勝手な思い込み」に陥ることを避ける助けになります。

    主観のやっかいな所は、「当たることもある」ことです。 しかし、長い目で見れば、自分の相場観よりもインジケーターなどに基づく客観的な判断の方が収支に良い影響を与えるはずです。 インジケーターの研究などにも力を入れねばなりません。

    基本方針の変更

    買いを考えるといっても、それは期間限定であり、相場の状況次第です。 時間の経過や値動きによって基本方針に変更を加えることになります。 どういった動きになった場合に方針の変更が必要になるのか、その条件も事前に明確にしておきます。

    エントリー条件

    基本方針が決まったところで、それを行動プランに落とし込みます。これは良く「銃を撃つ動作」に例えられます。

  • 銃をホルダーから抜く
  • 銃を構えて狙いを定める
  • 引き金を引く
  • エントリーの準備

    「銃をホルダーから抜く」というのは、基本方針として「何もしない」以外を選択したケースです。 このステップを重視しないと、何もしないと決めたはずなのに、相場の動きに翻弄されて、計画に無いトレードをしてしまうことになります。 大切です。

    セットアップ

    「銃を構えて狙いを定める」は、セットアップなどとも表現されます。 エントリー方向を決め、それを実行に移す最低条件を満たした状態です。 まだエントリーは行いません。指値を入れたり、成り行きで入る準備をする段階です。

    玉を撃つのかどうかは、その後の相場次第です。 時には、構えを解く、言い換えるならセットアップを解除することもあるでしょう。 これらは素早い判断が求められますので、トレードプランではなく、手法やトレードルールにより対応すべきことです。

    抽象的な話が続くと分かりずらいと思うので、少し具体例を交えてみます。

    基本方針として「買い」を定めました。買い出動には、「移動平均線を試して、割らなければ」という条件を付けたとします。 場が開いて、実際に移動平均にタッチする動きが発生しました。この状態が「買いのセットアップ」です。

    条件の前半部分「移動平均線を試す」が満たされたわけです。後半の「割らなければ」はまだ分かりません。 移動平均線が支持線として機能して、反発上昇が確認できれば次のステップに進みます。 移動平均線を割ってしまえば、セットアップ状態は解消されます。

    トリガー

    「引き金を引く」はトリガーとも表現されます。「子供でも分かる数字の問題」に対応するステップです。 前の足の高値を越えたらといった形でビジュアル的に判断する人も多いかと思います。 いずれにしても、閾値を設定し、それを越えたかどうかを簡単に判断できるようにしておきます。

    成り行きの場合、閾値を越えたら自分でトリガーを引かなければなりません。 ここまで計画に沿った動きが観測されているわけです。そして、その先でどう動くかは誰にも分かりません。 恐怖や欲望といった感情が入り込む余地をなくすためにも、機械的にトリガーを引くべきです。 想定と違う動きとなったら撤退すれば良いのですから。

    分類する

    計画に基づいたエントリーであれば、それは理論に裏打ちされたものであるはずです。 であるなら、エントリーにも決まったパターンがあるはずで、分類が可能となります。

    セットアップも単なる「買いのセットアップ」ではなく、「〇〇〇の買いのセットアップ」という具合になります。 これが出来ると、

    • セットアップが解消される条件
    • エントリー後の撤退条件

    なども自ずと定まり、エントリーするかしないか、撤退するかしないかに悩むことが無くなります。 また、売買譜を見返す時にもより深い分析が可能となり、改善点も見つかりやすくなるはずです。

    撤退判断

    トレードの締め括りです。エントリーの精度よりも収支に与える影響は大きい部分です。 別の言い方をすれば、技術で差が出る部分だとも言えます。

    利益確定

    ターゲット価格は、事前に作成するプランの段階でも大まかな設定が可能です。事前に決めて置けることはすべてやっておくことが基本です。

    支持抵抗帯や波動のカウントなど持てる知識を総動員して、トレードの最初から終わりまでのイメージを固めておきます。 「自分は臨機応変には対応できない」をベースにトレード組み立てると精神的に楽になります。

    想定と異なる値動きとなったら、「手が合わなかった」と考え、すっぱりと諦めるだけ。 すべての値動きを利益に変えることは出来ません。だから、分割売買という手法が採用されるのです。

    分割の手仕舞いなら、ターゲット価格に到達してもトレードルールを優先してポジションの一部を維持することは十分考えられます。

    損切り

    基本的にはルールに従うだけですが、これも「子供でも分かる数字の問題」に変換しておくことが大切です。

    エントリーをする前に、そのトレードで受け入れる最大リスクは明確にしておかねばなりません。 これを越える損失を発生させないことは大前提です。直近のボラティリティはトレードプラン作成の段階で確認しておくべきことの1つです。

    エントリー後であっても「セットアップ解消の条件」は引き続き判断の基準となります。 これを満たすということは、エントリーの根拠が崩れたということに他ならないからです。

    エントリーの根拠が崩れる価格や固定LC幅に逆指値を入れ、その価格は気分や感情で変更しないようにします。 もし、ロスカット幅を広げるのであれば、同時にポジションサイズも小さくしましょう。

    ポジションを切るかどうか迷っている状態は、自分では意識することが難しいですが、冷静さを欠いています。 冷静であれば、プランやルールに現状を照らし合わせて理詰めで判断を下せるはずなのに、それが出来ていないのですから。

    こういった時もポジションサイズを小さくすることがベストではなくともベターである可能性が高いです。

    プランの実行

    いくら精度の高いトレードプランを作っても、まだ壁があります。最大の壁と言っても良いかもしれません。 それはプラン通りのアクションを実行することです。(ルール通りに行動をすることも同様です)

    繰り返しますが、相場の値動きはメンタルに強烈な影響を与えます。 恐怖や欲望がプランの遂行を邪魔するのです。

    だから、売買府を見返すと、プランに無いことをして損失となったクソトレードが見つかります。 また、売買譜に残らないプラン通りにトレードをしていれば利益なった機会損失が生まれます。

    勉強と研究によりトレードプランの精度を高めることとは別に、経験と内省によりプラン通りのアクションを実行する胆力を鍛えることが必要です。 プランの作成と実行は完全に切り分けて考えます。プランの実行時の正解はプランに従うことです。

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