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相場のメカニズム

買ったら下がり、売ったら上がるのは何故なのか? いつもそうなら偶然ではないはずです。


2021年3月20日

裏目

それなりに相場の勉強をして実践に挑むも、悉く行動が裏目に出るという経験は誰もが通る道です。 同じ過ちを繰り返さないよう、用心深く行動しても、それがまた裏目に出て八方塞がりとなります。

「損小利大」なんてお題目は誰でも知っています。損失を小さく、利益を大きく、たったこれだけのことなのに難しいのです。 不可能に近いという印象を持つ人も多いのではないでしょうか。

「損失を小さく」と思い、早いタイミングで損切りすれば、当初の想定が当たっており大きく伸びる。 「簡単に損切りしてはいけない」と考えて含み損に耐えれば、そんな時に限って損失が大きく膨らみパニックになって投げることになる。

利益を確実なものにするために利確をすれば、その後大きく伸びる。 「利益を大きくしないとトータルでのプラスは難しい」と考えて、安易な利確は避けてポジションを保持した時は反転して利益を飛ばしてしまう。

何故こんなことが起こるのでしょう?毎回毎回こんなことが起こるなら、それは偶然ではないはずです。 そうだとしたら、自分の意思でエントリーの判断をしているつもりでも、実は行動をコントロールされているといった可能性は無いでしょうか。 相場初心者が気づけていない相場のメカニズムがあり、それにどっぷりとハマってしまっている可能性があります。

メカニズムを考える

煩雑になるので上昇を例に考えることにします。 登場人物は以下の3グループです。

  • 初心者
  • 中級者
  • 上級者
  • それぞれのポジションサイズは、極小、小さい、大きいとなっており、当然相場の動きを支配するのは上級者(プロ、機関投資家)です。 上級者が相場を上昇させようと考える時、どのようにその流れを作るのか を考えてみたいと思います。

    価格は売り買いの需給関係で決まります。大きな上昇は「買い方の圧倒的な有利」により達成されるのですから、そんな状況を作れば良いことになります。

    相場の支配者たる上級者がどのようにそれを実現させるのでしょうか。 我々個人トレーダーが利益を得るためには、プロの思考に沿ったアクションをすることが必須ですから、このようなことを考えるのはきっと役に立つはずです。

    買い方が圧倒的に有利な状況

    売り圧力を上回る買い圧力があれば買い有利な状況となります。 例えば、売り圧力10に対し、買い圧力が12だった場合、これは買い圧力が売り圧力を上回っており、買い方有利と言えます。

    売り方としては更に圧力を増して13にすれば有利不利が逆転するのだから頑張るはずです。 そして、それに対して買い方も圧力を増して14を目指すことになるでしょう。

    言わば正面切って殴り合っている状況で、1発良いパンチが入れば状況は変わるわけです。 こんな状況でどちらが勝つかにベットすることは得策ではありません。正に博打になってしまうからです。

    また、売り方に負けじとリソースを割いてしまっているので、万が一負けた時が怖くなります。逆襲、カウンターを警戒しなければなりません。

    買い方有利の状況を作りたいと言っても、こんな状況は理想的だとは言えません。 では、どのような状況が好ましいかと言えば、必要なリソースは少なく且つ売り方を圧倒している状況、例えば売り圧力1に対して買い圧力5といった感じになるのではないでしょうか。

    買い圧力は5と少ないものの、売り圧力1の5倍であり、売り方としてはちょっと張り切る気にはならないはずです。

    売り圧力

    売り圧力は、その中身を考えてみると以下の2によって構成されていることが分かります。

  • 売り方の新規の売り
  • 買い方の返済売り
  • 「売り圧力1に対して買い圧力5」といった状況を作るには、まず 新規の売りが出にくい環境、チャートのお膳立てが必要 になります。

    つまり、上級者がいくら相場の支配者だからと言っていつでも上昇の流れをつくれるわけではないのです。 少なからず上級者間で意見が一致している必要があります。意見の分かれる環境では、上記のような泥仕合に発展しかねないからです。

    テクニカル的に言って絶好ともいえる状況が訪れたとしましょう。「チャートが整った」と言っても良いかもしれません。 そこで、トレンドフォロワーは上昇開始の動きを確認して、買いで入ることになります。 と同時に「潜在的な売り圧力」となるのです。

    つまり、このタイミングで入った人は、大きな上昇相場を作りたい上級者にとっての敵対者に知らずの内になっています。 「邪魔な存在には消えてもらう。まずは初心者から」、これが上級者の考えることです。 では、どうやって上級者は初心者にご退場願うのでしょうか。

    初動に飛び乗る

    大きめの陽線が出ると、初心者はこれに飛び乗りたくなります。静から動への状態変化。この流れに乗り遅れまいと初動に飛び乗ります。

    しかし、それ以上に価格が上昇することはありません。これは撒餌の様なもので、初動に乗った人は含み損を抱えることになります。

    損切する人もいれば、保持する人もいるでしょう。保持した人も「初動に飛び乗ったことが誤りだった」ことには気付いているはずです。 保持を選んだ彼らはどのようなことを考えるでしょうか。

    「このエントリーは間違いだった。でも、せめてトントンで終わらせたい」

    だから、ここから上げても買い値辺りで返済の売りが入ることになります。この状態を「上値が重い」と言ったりします。

    1回目の振り落とし

    このままでは大きな上昇に繋げられないので、上級者は1回目の振るい落としを実行します。言わば初心者狩りです。

    これは非常に簡単なのです。初心者は大きめの陽線に飛び乗ったわけだから、これの逆をやれば良いだけだからです。 大きめの陰線を作り、パニックにさせて損切りさせれば良いのです。

    ロスカットも皆似たようなところに置いています。 それをブレイクすれば、売りが売りを呼んで更に下がることになるでしょう。大概の初心者は思考停止するか耐え切れずに損切りすることになるはずです。

    2回目の振るい落とし

    これで駆逐されるのは初心者であって、中級者ともなると「振るい落とし」があることが分かっているいるので、そう簡単にはいきません。 彼らは目先の動きには動じず、チャートが崩れるまではポジションを維持するからです。

    さぁ、次のターゲットは中級者だ。彼らにもご退場願いましょう。

    整ったチャートは前提条件であり崩すわけにはいきません。これを崩すと「新規の売り」を誘発してしまうからです。 では、どうやってしぶとい中級者を諦めさせるのか。

    いくつか方法が考えられます。ひとつは、もう一度上への動きを作って、これを潰す方法です。 「やっぱり上で合っていた!」から、「やっぱりダメだった…」という流れを演出します。 最初の振るい落としには耐えられても、2度目ともなると諦める人も出てくるでしょう。

    後は、「何もしない」 というのも手段となります。 特段に何かを仕掛けることをしなくても、動かなければ時間の経過とともに自信が揺らいで勝手に諦める人が出てくるはずだからです。

    3回目の振り落とし

    チャートは依然として整った状況を維持しています。そして、大方の邪魔な存在も排除し終えました。 そこで最後のダメ押しと最終的な仕込みに入ります。

    下への動きを再度作ってチャートを崩す。 これでまた「ロスカットの売り」が入り、それにプラスして先走った初心者の「新規の売り」も入るでしょう。 これらの売りを上級者が吸収して、すべての状況が整ったことになります。

    ようやく上昇

    「下の否定」で新規の売りは続かない。返済売りも、もう出ない。 つまり、売りが極端に少ない状況になっているのです。 だから、少ないリソースで買い上がることが可能で、上述の「売り圧力1に対して買い圧力5」といった理想を実現できます。

    この上昇を見て、既に買いポジションを手放してしまっている初心者や中級者は何を思うでしょうか。

    「やっぱり上で合っていたんだ!」

    見込みは合っていたにも関わらず損失を出した。持ったままでいれば利益になったチャンスを逃した。 これらの現実が「悔しい」という感情を生むことになります。感情をコントロールできないと、知らずの内に感情的になってしまうのです。

    売り圧力が弱いのだから、価格はどんどん上がります。価格が上がる度に感情の判断に対する影響は増し、 自分が正しかったことの証明するために、この動きに飛び乗ってしまう。

    感情はトレードにとって百害あって一利なしです。理性ではなく感情によるトレードだから「飛び」乗ることになります。計画して乗ったのとはわけが違うのです。 自分の意思ではなく、あたかもそう行動するよう仕向けられたがごとく、上級者の肥しとなっていることも分からずにとなるわけです。

    この後追いの買いが、上級者の返済売りの相手方となります。

    押し目

    用心深い人間は、「もう騙されないぞ」としっかりとした押し目を待つかもしれません。 でも、上級者はもう一仕事終えているのです。押し目買いの結果がどうなるかお分かりでしょう。

    このようなことが日々繰り返されてチャートは作られていくのです。

    情報格差

    上級者(プロ、機関投資家)は、初心者や中級者を手玉に取っています。 これが可能なのは、上級者がその思考において初心者や中級者よりも優れているからだけではないでしょう。

    上級者は、個人の売買動向をリアルタイムで知るすべを持っているはずです。 売買手数料を無料にする代わりに売買動向の情報を第3者に販売するロビンフットのような業者も登場しました。

    誰のポジションなのかは特定できなくとも、そのサイズによりデータを集計すれば、 「返済売りの圧力が少ない」といった個人トレーダーには入手不可能な情報を得ることができます。 想像力を働かせなくても、売り圧力が少ないことをデータで確認して買いに入ることができるのです。

    レベル2情報にアクセスできれば、工夫次第で大口の取引動向をある程度察知することは可能でしょう。 しかし、これもコンピューターによる発注で分割されてしまえば限界があります。

    上級者がどのようなことを考えるのかを理解し、チャートから上級者の行動の痕跡を読み取る。 これが個人トレーダーが取り得る真っ当な対抗策となるのです。

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