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裁量トレードの自由度をルールで制限する

裁量トレードにおいて感情をどうコントロールするかを考えるのは非常に大切なことです。 もっとも効果が高いのは、ルールで行動に制限をかける方法でしょう。


2021年2月11日

感情のコントロール

トレードで最も重要なことは何かとなれば、それは「感情のコントロール」と言えるでしょう。

ある程度経験を積んだトレーダーであれば、これに異を唱える人は少ないはずです。 なぜ感情のコントロールが重要なのかというと、トレードで負ける原因のほとんどが感情によるものだからです。

この感情を詳しく観察すると、すべての感情は「欲望」と「恐怖」に行き着くことが分かります。 ですから、トレードで負ける原因のほとんどはこの2つにあると言っても過言ではありません。

欲望 - Greed

損切りを難しくさせるのは、

  • 負けたくないという思い
  • マイナスを小さくできるかもしれないという期待
  • プラスに転じるかもしれないという期待

こういった感情です。様々な形をとりますが、結局のところ、これら全ては「〇〇〇になって欲しい」という願望であり、欲望です。

恐怖 - Fear

利益を大きく伸ばせないのは、「反転して含み益が無くなってしまうかもしれない」という恐怖のためです。

欲望と恐怖は独立したものではなく、連携を取りながら常にトレーダーをコントロールしようとしてきます。 なにも対策を講じなければ、コントロールしなければならない対象に、逆に行動をコントロールされてしまうことになるのです。

こんな例えは枚挙に暇がありません。そもそも、トレードを始めた理由だって本を正せば「欲望」と「恐怖」 なのですから。 自分がなぜトレードをはじめたのかを思い出してみてください。

裁量とシステム

短期トレードのやり方には大きく2つあります。

  • 裁量トレード
  • システムトレード

裁量では思惑が、システムでは条件がそれぞれの判断基準です。

思惑は人が抱くものであり、人は感情に左右されやすい生き物です。 先ほどお話したように、感情はトレードにとって害悪ですから、対処法を考えねばなりません。

これには、「感情とうまく付き合っていく方法」を考えるのではなく、「感情を排除してしまう」という道筋もあるでしょう。 この道を進むのがシステムトレードです。欧米ではこれが大変人気があります。

エントリーの判断は条件により自動的に決まりますので、さらにこれを発展させて発注処理まで自動化してしまおうというブームも起きました。

システムトレードは難しい

やってみると分かりますが、システムトレードというのは簡単なものではありません。 まず、右肩上がりの資産曲線を描くシステムの構築が難しいという問題があります。

現代では機械学習という方法もありますが、これはデータ量と学習の効率化が肝となりますから、資金の豊富な機関投資家には敵いません。 個人トレーダーがシステムの最適化という方法で大手と戦うことは厳しいと言わざるをえないでしょう。

次に、感情の問題があります。 感情を排除するのがシステムトレードなのに、やはり感情が問題となるのです。 システムが感情を排した判断を代わりに行なってくれても、結局そのシステムを運用するのは人だから です。

システムトレードの話では、「ドローダウン」という言葉が切っても切れないものになります。 相場環境は一定ではありませんので、必ずと言ってよいほど一時的に資金を大きく減らす時期があるからです。

バックテストでは資金曲線が右肩上がりとなっていても、ほとんどはそのシステムにとって都合の良い期間での結果なのです。 そのシステムが想定していない相場環境となれば、想定していない損益が現実となるのは当たり前でしょう。

バックテストでは「ドローダウンの発生期間は一瞬」に見えます。そして、その後に復活することが分かるのですから、耐えられるだろうと考えるかもしれません。 しかし、リアルタイムでは、その後に復活する保証も無く、日々減り続ける資金と向き合うことになるのです。

判断はシステム、発注は手動でということであれば、システムに従ってエントリーすることに躊躇してしまうではないでしょうか。 発注までを自動化していたなら、そのシステムを止めたくなるのではないでしょうか。

システムトレードは理想形

システムトレードを否定するものではありません。むしろ、システムトレードは理想形 だと考えています。 だからこそ、機械学習にも取り組んできました。ディープラーニングも強化学習も、時系列データ分析などにも手を出しました。

しかし、満足する結果は得られておらず、現状、納得のいく運用可能なシステムを私は持っていないのです。 ですから、裁量トレードの道、つまり、「感情とうまく付き合っていく方法」を模索するしかありません。

手始め

まず感情を観察することからはじめました。売買譜に自分の感情をメモするようにしたのです。

負けトレードになった後、熱くなって直ぐにリエントリーすることがあります。この時、自分が正常な状態でないことは分かりません。 しかし、一旦ポジションをとってしまうと、不思議と少し冷静になれるのです。 だから、この行動が感情的なものだったことがエントリーした後に直ぐに分かります。

こういう状態のことをポーカーの世界では「ティルト」と言います。カッとなって冷静な判断が出来なくなっている人のことです。 上級者はティルトに入ったプレイヤーを狙い打ちます。

自分がティルトに入って、無計画なエントリーをしていることに気づけたなら、売買譜に「ティルト」とメモをしておきます。

後から売買譜を見返すとき、もしくはデータを集計するときに、 ティルト状態でのエントリーがどういった結果をもたらしたかを客観的に見ることができるでしょう。

制限を設ける

ティルトに入らないように精神的な鍛練を積むことも一つの方法だと思いますが、 トレードにはギャンブル的な部分もあり、精神論で何とかなるとも思えません。 現実的なのはルールで自分を縛ることです。

トレードを難しくさせる要因のひとつは、自由過ぎることにあります。 自由は素晴らしいことですが、制限があった方が正しい答えを出せるというのはよくある話です。

ケース1
A:「好きな果物はなに?」

B:「うーん、バナナかな」

A:「リンゴよりバナナのが好きなの?」

B:「そっかー、リンゴがあったか。リンゴの方が好きかも」

ケース2
A:「リンゴとバナナどっちが好き?」

B:「リンゴだよ!」

相場環境による制限

まず、考えつくのは 相場環境による制限 です。例えば、「75本移動平均線の上に価格があるときは、買いしかしない」といった制限がこれにあたります。

トレードプランによる制限

感情が動きやすいのは、リアルタイムで大陽線や大陰線が出来つつある時です。 また、ポジションがある時は、例えチャートを見ていなくても「もしかしたら、暴落しているかも」と恐怖の感情が生まれやすいものです。

  • チャートが動いていない時
  • ポジションを持っていない時

この2つが重なる時が、もっとも冷静な判断を行なえる時間となります。 ですから、ポジションの無い状態で相場が動いていない時にトレードプランを練っておく ことは、感情による判断を避けるのに効果的な方法です。

事前に、「こういう動きとなったらエントリーしよう」という計画を立てておきます。 そして、このトレードプランを制限として使います。

トレードプランは制限なく自由に作って良いものではありません。「相場環境による制限」にひっかからないように作成するのがポイントです。

具体的には、事前に想定していた動きとなった時だけ、トレードを実行することをルール化する のです。 もし、想定していなかった動きとなって、それが大きなチャンスに見えても、全て見送るのがルールに従ったアクションとなります。

見送ったことで大きな利益を得れなかったとなれば、それは悔しい思いをするでしょう。 悔しい思いは正に感情なのですから、扱いに注意せねばなりません。 冷静に考えれば、ルールに従った自分を褒めてあげるべき場面なのです。

悔しい思いの正しい処理は、「次はチャンスを見逃さない!」なんて安易に考えるのではなく、より精度の高いプラン作りの原動力とすることです。

インジケーターによる制限

トレードプランに合致する値動きが実際に発生したときはトレードOKとなるわけですが、 この 「トレードプランに合致したかどうかの判断」にも感情が入り込んできます。

無計画なトレードはいつも、「上がりそうだ、下がりそうだ」という思惑からはじまるのです。 思惑は理論をベースにしたものと、感情をベースにしたものに別れます。 感情をベースにした思惑によりエントリーしてしまうのが無計画なトレードです。

この感情をもとにした思惑が強く働くと、合致の判断を甘くします。 したがって、自分が都合よくチャートを見ていないか、ここにもチェックを入れる必要がありそうです。

この役割を果たすのはインジケーターでしょう。

  • オシレーター系であれば転換したら
  • トレンド系であればラインを越えたら

これらを単にシグナルと考えるのではありません。 ここ至るまでのプロセスが1つの流れになっていることを強く意識してください。

相場環境による制限があり、 それを基にしたプランがあり、 プランに沿った値動きになったという判断があり、 その判断がインジケーターにより追認された。だから、エントリーする

エントリーまでと、エントリー後

ここまで「感情とのうまい付き合い方」を考えてきました。それは無計画なエントリーを避けることにもつながるものです。

具体的には、エントリーに至る過程の中で、どういった時に感情の影響が大きくなるのかを分析し、1つ1つ潰しいていくという方法でした。

トレードはエントリーだけのものではありませんので、 ポジションを持った後についても同様に考える必要があるでしょう。

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