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オプション売買戦略の概要


2021年10月1日

売買の優位性

オプション売買と言えども所謂普通のトレードと基本的には変わらない。利益を出すには2つの方法がある。

  • 安いオプションを買い、高くなったところで売却する
  • 高いオプションを売り、安くなったところで買い戻す

オプション売買では、「オプションの特性」を活かしたポジションを組むことにより優位性が生まれる。 味方につけるべきオプションの特性には以下のようなものがある。

  • トレンド
  • スピード
  • マネーネス
  • タイムディケイ
  • ボラティリティ
  • 歪み
  • ロールによる継続性

6つの構成要素

オプション売買戦略は突き詰めれば6つの構成要素の組み合わせに過ぎない。

  1. コールのロング
  2. コールのショート
  3. プットのロング
  4. プットのショート
  5. 原資産のロング
  6. 原資産のショート

これらをレッグ(leg)と言い、いかなるオプション戦略も、これら6つのレッグの組み合わせである。 2つ以上のレッグを組み合わせたポジションをスプレッド(spread)と言い、単一レッグのポジションをネイキッド(naked)またはアウトライト(outright)と言う。

スプレッドの構築は、対象とアクション、さらに限月(期近同士、期先同士、期近と期先)の組み合わせとなり、その組み合わせの数は無限に存在すると言ってもも良いだろう。

スプレッド

スプレッドにより、オプションそれぞれが持つ特性をコントールすることが可能となる。ある特性は残すが、ある特性は無くすといった具合である。 その結果、レッグの組み合わせ次第で、そのポジション独自の特性を生み出すことができる。

したがって、オプション売買では「ポジションの特性による優位性獲得を目指す」ことになる。 そのためには相場観だけでなく、グリークスや損益図などを活用することが重要だ。

方向性を重視するか

無数にあるオプション売買戦略は、「方向性を重視するかどうか」で大きく2つに別けることができる。

Directional Strategies

株式などと同じく、今後の相場の方向性を予測し、それに基づいたポジションを構築する。 相場のトレンドを予測して、それに乗ろうとするわけだからトレンド戦略とも呼べるだろう。

Non-Direction Strategies

方向性が中立となるようにポジションを組み、タイムディケイやボラティリティの変動から利益を得ようとするもの。

これは更に「方向性を重んじない戦略」と「方向性性のない相場での戦略」に分類できる。 前者の戦略にはストラドルやストラングルが、後者の戦略にはバタフライやコンドルなどがある。

デビットとクレジット

オプションを買うには「出金」を伴う。逆にオプションを売ると「入金」となる。

スプレッドの構築で出金が入金を上回れば「デビット」、逆に入金が出勤を上回れば「クレジット」と、スプレッド分類できる。

  • 出金 > 入金 = デビット
  • 出金 < 入金 = クレジット
  • これはスプレッド構築時の話で、クレジットだからと言って利益が約束されるわけではない。 あくまでもポジション構築時のコストに関する分類となる。 ポジションを期先に乗り換える「ローリング」でも同じことが起こる。

    ブル・コール・スプレッド

    代表的なデビッド・スプレッドに「ブル・コール・スプレッド」があります。

    ブル・プット・スプレッド

    代表的なクレジット・スプレッドに「ブル・プット・スプレッド」があります。

    バーティカル、カレンダー、ダイアゴナル

    同一満期で権利行使価格だけ異なるレッグで組んだスプレッドを「バーティカル・スプレッド(vertical spread)」と言います。 逆に、同一権利行使価格で満期日だけが異なるレッグで組んだスプレッドを「カレンダー・スプレッド(calendar spread)」と言います。 両方とも異なるスプレッドは「ダイアゴナル・スプレッド」と言います。

    満期日 権利行使価格
    Vertical 同じ 異なる
    Calendar 異なる 同じ
    Diagonal 異なる 異なる

    利益の源泉

    方向性を重視しない戦略では、意図的に方向性を中立に保つ。 相場の方向性以外から利益を得ることを狙うためである。 そのためには、グリークスの以下の特徴を活かし、スプレッドを構築する。

  • デルタには正負がある
  • ガンマ・ベガには正しかない
  • セータには負しかない
  • オプションの利益の源泉は4つのグリークスにある。その内の1つから、もしくは複数から利益を得ることができる。 しかし、グリース間にはトレードオフの関係が存在するので、4つすべてから利益を狙うことはできない。

    何から利益を得ようとしているのかにより、ポジション全体のグリークス値を調整する必要がある。

    デルタ

    ・ポジティブ・デルタ

    ポジション全体のデルタをプラスになるよう調整し、「原資産価格の上昇」により利益を得る。 コールのロング、プットのショートが「ポジティブ・デルタ」に寄与する。

    ・ネガティブ・デルタ

    ポジション全体のデルタをマイナスになるよう調整し、「原資産価格の下落」により利益を得る。 コールのショート、プットのロングが「ネガティブ・デルタ」に寄与する。

    ガンマ

    ・ポジティブ・ガンマ

    ポジション全体のガンマをプラスになるよう調整し、「原資産価格の急変動」により利益を得る。 コール、プット共にロングが「ポジティブ・ガンマ」に寄与する。

    ・ネガティブ・ガンマ

    ポジション全体のガンマをマイナスになるよう調整し、「原資産価格の膠着」により利益を得る。 コール、プット共にショートが「ネガティブ・ガンマ」に寄与する。

    セータ

    ・ポジティブ・セータ

    ポジション全体のセータをプラスになるよう調整し、「早いタイムディケイ」により利益を得る。 コール、プット共にショートが「ポジティブ・セータ」に寄与する。

    ・ネガティブ・セータ

    ポジション全体のセータをマイナスになるよう調整し、「遅いタイムディケイ」により利益を得る。 コール、プット共にロングが「ネガティブ・セータ」に寄与する。

    ベガ

    ・ポジティブ・ベガ

    ポジション全体のベガをプラスになるよう調整し、「ボラティリティの上昇」により利益を得る。 コール、プット共にロングが「ポジティブ・ベガ」に寄与する。

    ・ネガティブ・セータ

    ポジション全体のベガをマイナスになるよう調整し、「ボラティリティの減少」により利益を得る。 コール、プット共にショートが「ネガティブ・ベガ」に寄与する。

    グリークスを中立化する方法

    主に3つある。

    コールとプットによる中立化

    デルタ値の調整は対象(コールとプット)とアクション(ロングとショート)の選択により可能。

    ロングとショートによる中立化

    デルタ以外の調整はアクション(ロングとショート)の選択により可能。

    原資産との組み合わせによる中立化

    原資産のデルタ1、ガンマとセータとベガは0である。原資産もデルタ値の調整に使える。

    ポジションの調整

    ロングとショートを組み合わせて「ヘッジされたスプレッド」を組んでも、相場の状態変化によりヘッジにズレが生じる。 再調整によりズレを修正する際、ロングとショートのどちらに手を入れるべきか。それはオプションが割高か割安かによる。

    原則
  • 割安のオプションは、ロングで新規に買い建てる or ショートしていれば買い戻す
  • 割高のオプションは、ショートで新規に売り建てる or ロングしていれば返済売り
  • オプションが割高

    オプションのショートポジションを減らす

    割高のオプションを買い戻すことになり、損をする。

    オプションのロングポジションを減らす

    割高のオプションを返済売りすることになり、得をする。

    オプションのショートポジションを増やす

    割高のオプションを新規で売り建てることになり、得をする。

    オプションのロングポジションを増やす

    割高のオプションを新規で買い建てることになり、損をする。

    オプションが割安

    オプションのショートポジションを減らす

    割安のオプションを買い戻すことになり、得をする。

    オプションのロングポジションを減らす

    割安のオプションを返済売りすることになり、損をする。

    オプションのショートポジションを増やす

    割安のオプションを新規で売り建てることになり、損をする。

    オプションのロングポジションを増やす

    割安のオプションを新規で買い建てることになり、得をする。

    グリークス中立化のメリット

    以上をまとめると以下のようになる。

    オプションが割安の場合
  • 新規の買い建てにより、ロングポジションを増やす
  • 買い戻しにより、ショートポジションを減らす

  • オプションが割安の場合
  • 返済売りにより、ロングポジションを減らす
  • 新規の売り建てより、ショートポジションを増やす
  • ヘッジのズレを調整する際、上記の方針に従うと利益を確定しながら中立化することができる。 これはグリークス中立化の大きなメリットと言える。

    デルタ・ニュートラル

    ガンマ、セータ、ベガが利得の中心となる。デルタの調整には3つの方法がある。

    • コールとプットのデルタ値が正負で異なることを利用する
    • ロングとショートで正負が入れ替わる特性を利用する
    • 原資産(デルタ=1)を利用する

    ロング・ストラドル

    ATMのコールのデルタは0.5、ATMのプットのデルタは-0.5です。 それぞれを買うとポジションのデルタは0となります。

    ポジション構築時のデルタ調整

    タイムディケイを狙う

    デルタ・ニュートラルに調整したスプレッドをショートすることで、相場の方向性に関わらず日々減価していくオプション価格により利益を得られる。 戦略としては「ショート・ストラドル」などがこれにあたる。

    ボラティリティを狙う

    相場が静から動へと状態変化すると見込まれる時は、デルタがニュートラルの「ロング・ストラドル」で利益を狙える。

    ガンマを狙う

    デルタがニュートラルの「ロング・ストラドル」は、いずれかの方向に相場が大きく動けば、ボジティブ・ガンマの影響でデルタ値が変動し利益を得ることができる。

    既成ポジションのデルタ調整

    ロックイン効果

    長期保有株や長期オプション(LEAPS)を含むポジションの場合、特に有効となる。 デルタの再調整時(リバランシング)に利益の確定ができ、しかも長期に渡って何回も行える。

    デルタ・ガンマ・ニュートラル

    セータとベガが利得の中心となる。

    コールとプットの選択よるデルタ調整では、双方プラスのガンマ値であるため、デルタ・ガンマ・ニュートラルは実現できない。

    まず、アクション(ロングとショート)によりガンマをニュートラルに調整し、ニュートラルから外れたデルタ値を原資産によって調整することで、デルタ・ガンマ・ニュートラルは実現できる。

    ベガ・ニュートラル

    デルタとセータからの利益を狙います。

    ボラティリティの上昇は、買い手にとっては好ましくとも、売り手にとっては警戒すべきものである。 売り建てたオプションの価格が上昇し、買い戻しに大きな費用を要する事態に陥ることを「踏み上げ(short squeeze)」と言います。

    ベガ・ニュートラルのポジションを取ることで、踏み上げのリスクを回避することが可能です。

    アイアン・バタフライ

    アイアン・バタフライは、ロングのATMのストラドルと、ショートのOTMのストラングルを組み合わせたポジションです。 ロングのストラドルのベガはプラスであり、ショートのストラドルのベガはマイナスとなります。 権利行使価格を調整することで、ポジション全体のベガ値をニュートラルにすることが可能です。

    ATMはミスプライスが少なく、OTMはミスプライスが多いことから、このスプレッドはタイムディケイだけでなく、ボラティリティを狙うこともできます。

    デルタ・セータ・ニュートラル

    オプションのロングとショート、そして原資産を組み合わせることで、デルタとセータをニュートラルに調整することができる。

    ストラドル-ストラングルの合成

    期近のショート・ストラドルと期先のロング・ストラングルでセータをニュートラルにし、デルタ値の差分を原資産で相殺する。

    デルタ・ベガ・ニュートラル

    ガンマとセータからの利益を狙う。原資産価格の変動とボラティリティの変動に対し、ニュートラルなポジションを作るための調整。

    オプションのロングとショートでベガをニュートラルに調整し、デルタ値の差分を原資産で相殺する。

    デルタ・ガンマ・ベガ・ニュートラル

    セータとボラティリティ・スキューが利得の中心となる。 ボラティリティ・スマイルのスマーク(Smirk)と呼ばれる歪みからの利益を狙う調整。

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