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ガンマ


2021年10月23日

相場観とデルタ

オプションをロングした時、原資産が上昇すればコールは値上がりし、プットは値下がりする。 逆にオプションをショートした時、原資産が上昇すればコールは値下がりし、プットは値上がりする。

ポジションのデルタがプラスの時、原資産が上昇すれば利益となり、原資産が下落すれば損失となる。 逆にポジションのデルタがマイナスの時、原資産が上昇すれば損失となり、原資産が下落すれば利益となる。

ポジションのデルタはトーレーダーの相場観を表現していると言って良いだろう。 「デルタ・ポジティブ」ならトレーダーブルマーケットを想定し、「デルタ・ネガティブ」ならベアマーケットを想定している。 「デルタ・ニュートラル」ならは持ち合い相場(レンジ相場)を想定しているか、上下の思惑を持っていないことになる。

デルタの変化

自分の相場観とデルタ値の一致をトレーダーは意識しなければならない。 それと同時に「敏感さ」も考慮に入れることが重要だ。 なぜなら、デルタの変化の度合いはマネーネスによって異なるためである。

そこで登場するのがデルタの変化率を示す「ガンマ(gamma)」というリスク指標である。 デルタの動きの更なる微分という意味で「デルタ・オブ・デルタ」などとも言う。

ガンマ($\gamma$)は以下のように定義される。

$$ \gamma = \frac{デルタの変化}{原資産価格の値動き}$$

$$ \gamma = \frac{\partial \delta}{\partial S} = \frac{\partial \delta ^2}{\partial S^2} $$

デルタの「傾き」であり、X軸に原資産価格、Y軸にプレミアムを取ったプロットの曲率(Curvature)に相当する。

ガンマはコールでもプットでもプラスの値を取る。 ちなみに、原資産のガンマは0である。 これは原資産のデルタが常に1であるためだ。 変化前も変化後もデルタは1なので分子が0になる。

$$ \Gamma = \frac{1-1}{原資産価格の値動き} = \frac{0}{原資産価格の値動き} = 0$$

ガンマの取る値

コールとプットに加え原資産そのものの売買もあり、更にロングとショートのアクションがある。 デルタとガンマについて、それぞれが取る値を表にまとめると以下のようになる。

デルタとガンマと原資産の関係

ポジション デルタ ガンマ
原資産 ロング 1 ゼロ
ショート -1 ゼロ
コール ロング プラス プラス
ショート マイナス マイナス
プット ロング マイナス プラス
ショート プラス マイナス

ATMでガンマは最も高くなる

ガンマはコールもプットもプラスの値を取り、ATMが最も高くなる。つまり、ATMのデルタが最も変化しやすい。

ATMのプットを買ったとする。ATMのプットのデルタは-0.5である。 デルタは「権利行使される確率」であり、プットの場合は絶対値を取るのであった。

少しでも原資産価格が上昇すれば、このプットはITMとなる。逆に少しでも下落すればOTMとなる。 上昇と下降の確率が半々であるななら、このプットがITMで満期を迎える確率も現状は半々となる。

この少しでも動けばマネーネスが変化する状況がガンマが高いことの意味である。

ガンマのトレードオフ

ガンマとセータのトレードオフ

ガンマとセータは「両立できない関係性」にある。 ガンマ値が大きくプラスの時は、セータは大きなマイナスになる。

ガンマとセータは互いに打ち消しあう関係にあり、この関係を、

  • セータ・ガンマ・トレードオフ(theta-gamma trade-off)
  • ガンマのスキャルピング(scalping gamma)
  • セータのブリーディング(出血)(bleeding theta)

などと言う。

ガンマとベガのトレードオフ

ガンマもベガもATMで最大値を取る。 ATMのガンマは満期日が近づくにつれ値を上昇させるが、ベガは満期日が近づくにつれ値を減少させる。

ガンマの性質

ガンマはデルタ値の安定度とも表現できる。 各マネーネスのレベル(OTM、ATM、ITM)でのデルタ値の変化の度合いを示しているからだ。

ガンマ値が大きいほど、原資産価格の変動がオプション価格に与える影響は大きい。 この意味で、デルタ値は不安定だと言える。

ガンマ値が小さいほど、原資産価格の変動がオプション価格に与える影響は小さい。 この意味で、デルタ値は安定的と言える。

ガンマ値もデルタ値と同じく原資産価格の変動に伴って変動するが、デルタ値がOTM➡ATM➡ITMへと直線的に変動していくのに対し、ガンマ値はマネーネスのレベルにより曲線的に変化していく点で異なる。

ガンマ値は権利行使価格と原資産価格が一致するATMにおいて最大値を取り、原資産価格が上昇するにしろ下降するにしろ権利行使価格から離れるほど小さくなる。

ATMにおいてガンマ値が最大値を取るということは、ATMにおいてデルタ値は最も変化しやすいということである。

ボラティリティや満期日までの日数の影響

ボラティリティが高かったり、満期日までの日数が多い場合、ATMにおいてはガンマ値は低くなり、OTMやITMにおいてはガンマ値は高くなる。 これは、高いボラティリティや満期日までの日数が多い場合、マネーネスに変化が起こる可能性が高まるためである。

ボラティリティが低かったり、満期日までの日数が少ない場合、ATMにおいては高いガンマ値を持つが、OTMやITMでのガンマ値は低いままとなる。 これはボラティリティが低かったり、満期日までの日数が少ないと、マネーネスが変化する可能性が低いためである。

相場観

相場の転換点

単純な「Long Call」や「Long Put」であれ、デルタ・ニュートラルな「Long Straddle」であれ、オプション買いのみの戦略はポジティブ・ガンマとなります。

これらの戦略は相場が思惑通りに動くと、含み益が膨らむと同時にデルタの絶対値が大きくなります。 ここで肥大したデルタへの対処が問題となります。

  • デルタを調整する
    • 減らす調整(一部もしくは全ての手仕舞い)
    • 増やす調整(原資産やオプションの追加)
  • デルタを調整しない
    • 更なる巡行を期待して放置

デルタを調整した場合、大きな動きを逃す可能性があります。調整しない場合、相場が行って来いになって時間価値の減少だけが残る可能性があります。

ポジティブ・ガンマで利益を得るには、相場の転換点を当てないといけないわけで、これは原資産のトレードと変わりがありません。

そして、ポジティブ・ガンマはネガティブ・セータとなるので、タイムディケイを敵に回す分、不利と言えます。

レンジ相場

Short Strange」のようなデルタ・ニュートラル、ネガティブ・ガンマの戦術は、相場がどちらに動くか分からないから仕掛けるものではなく、明確な根拠があって相場が一定期間レンジ内で推移するという確信があるときに仕掛けるものです。

ネガティブ・ガンマは、相場が動くほどデルタを不利な方に増大させます。 これはつまり「逆張り」であり、レンジ相場を見込むのであれば、むしろ相場観にマッチする動きです。 そして、レンジ相場になるという確信からの仕掛けであれば、想定と異なる動きを見て撤退の判断も難しくありません。

相場の方向性が分からないからという理由で仕掛けると、デルタ調整との追いかけっこになり、ヘッジ貧乏になりかねません。

デルタ調整のために更に外側を売ることを選択した場合、ネガティブ・ガンマを積み増しすることになり、相場の動きにデルタが更に敏感になります。 相場が一方向に動き続けると、いつか逃げ切れなくなり、大きな損失となります。

ガンマは厄介

ポジティブ・ガンマは相場の転換を予測しなければならず、ネガティブ・ガンマはレンジ相場を予測できなければなりません。 いずれにしろ、相場の予測を高い精度で行う必要があるので、ガンマは味方に付けても敵に回しても厄介な存在であると言えます。

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