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幸せのインフラ

橘玲著『幸福の「資本」論』


2022年5月15日

感想

久しぶりに橘さんの本を読みました。私にとっては大いに賛同できる内容でしたが、一般的にはどうでしょうか。

3本柱

「幸せ」は主観的なもので、絶対の正解というものはありません。 それでも、その土台の方に目を向ければ、いくつか共通する項目が見えてきます。 幸せの形は様々でも、共通する条件があるということです。

  1. 自由
  2. 自己実現
  3. 共同体

これらは逆の状況を考えると分かりやすいかもしれません。 選択肢が無く、やりたくないことをしなければならない。 理想の自分や生活があっても、それらに近づけない。 人間関係が希薄で孤独を感じるなどです。

こういった状況で人が幸せを感じるのは難しいでしょうから、幸せの条件としてこれら3つが挙げられるのも納得がいきます。

これらの条件を満たすためにはインフラが必要というのが著者の意見で、それを「幸せのインフラ」と呼んでいます。 以下がそれぞれに対応します。

  1. 金融資産
  2. 人的資本
  3. 社会資本

会計の役割は多数の経済取引を一律に評価することで、この視点を拡張すれば、以下のように言うこともできるはずです。

金融資産 金融資本を金融市場に投資して富を得る
人的資本 労働力を労働市場に投資して富を得る
社会資本 周りの人たちとの関係性から富を得る

金融資本と人的資本は類似性がありますが、人的資本の活用、すなわち「仕事」から得られるものを全て金銭に還元することはできません。それは現代社会において、仕事を通じた自己実現こそが幸福の条件となっているからです。

社会資本にいたっては、共同体から愛情や友情といった富を得ていることは誰にでも分かりますが、それを金銭に換算することは原理的に不可能です。

いずれも株式・債権、不動産のような"実体"があるわけではないので資産をリスト化できない一方、「富を生み出すちから」、すなわち資本の側面がきわめて重要なことは明らかです。これが「人的資産」「社会資産」ではなく「資本」を使う理由ですが、私たちが人的資本や社会資本を"投資"して「富」すなわち資産を手に入れているという構図は金融資産と変わりません。(P29-30)

いずれにしろ、リスクを取ってリターンを得る「投資」という枠組みに還元できるわけですから、人生設計をシンプルに且つ統一的に考えることができるようになります。

8つのパターン

3つの要素を「ある/ない」で別ければ、その組み合わせは8パターンあることになります。

金融資産 人的資本 社会資本
超充
リア充 X
旦那 X
金持ち X
退職者 X X
ソロ充 X X
プア充 X X
貧困 X X X

4つのグループ

それぞれに分かりやすいニックネームが付けられており、その状態をイメージすることは難しくないでしょう。 8つのパターンは、以下の4つのグループに別けることができます。

  • 全て持っている(1位グループ)
  • 2つ持っている(2位グループ)
  • 1つだけ持っている(3位グループ)
  • 全て持っていない(4位グループ)

金融資産、人的資本、社会資本のすべてを誰もがうらやむような水準で持っている人が「超充」で、唯一の1位グループです。 しかし、著者曰くこの状態を維持することは原理的に難しいとのこと。お金が人間関係のトラブルを呼び込むためです。

その逆にどれも持ってないない人が最下位グループの「貧困」となります。 「貧困」はどれか1つでも手に入れられれば上のランクに昇格できるので、検討する価値はありません。 基本的には「稼ぐ力」を身に付けるか、「豊かな人間関係」の構築に力を注ぐことになります。

1つしか持っていないグループは、それを失ってしまうと「貧困」に転落してしまうことになります。 したがって、凡人は3つの内2つをを持つ2位グループのどれかを目指すことが良さそうです。

ソロ充実 ➡ お金持ち

社会的な動物であるヒトの幸福感は、社会資本(つながり)からしか得られません。強いつながりはベタな人間関係でつくられた愛憎の世界で、ときに大きな喜びを与えてくれますが、しばしば人生を破壊するほどの不幸をもたらします。(P251)

繰り返しになりますが、幸せのインフラをに入れるためには、金融資産、人的資本、社会資本の内1つないし2つを手に入れることです。 逆に言えば、3つ内のどれかを「切る」という選択が取れるということになります。

どれを切るかは各人の性格や価値観によるところが大きいと思いますが、効率面で言えば「社会資本」になります。 ほとんどの人は働く必要があるでしょうし、加齢などにより働けなくなれば、金融資産に頼ざるを得ません。

人生の問題のほとんどは(金銭と健康を除けば)近しい人とのこじれた関係から生じるのですから、切るなら「社会資本」ということになります。

「社会資本を切る = 世捨て人」とイメージされるかもしれませんが、そうではありません。

人間関係は、最も身近な家族や恋人(愛情空間)がまずあり、その周りに友人や知人(友情空間)が広がっていると考えるのが普通でしょう。 著者は愛情空間と友情空間を合わせた人間関係を「政治空間」と呼び、その政治空間の周りには遥かに広大な「貨幣空間」が広がっていると言います。

ややこしいことになり得るのは政治空間で、貨幣空間はドライで煩わしさがありません。 社会資本の重心を政治空間から貨幣空間にシフトさせることで、人間関係から生じるストレスを軽減することが可能となります。

よく芸人がプライべートな時間を「売れていない後輩芸人」と過ごしているという話をします。 当然、そこでの支払いは先輩である売れている芸人でしょう。それでも、その関係が心地よいと感じているはずです。

逆にコンビの相方とは距離を取り、電話番号も知らないなんて話も良く耳にします。 これは正に、社会資本の重心を政治空間から貨幣空間へとシフトしている例と言えるでしょう。

ベタな人間関係でなくても、ネット上の関係でも人は満足度を得られるようです。 SNSのフォロワー数は、リアルな友人の数と同等の価値があると考えている人も増えてきているようです。

ソロ充

煩わしい人間関係から距離を置き、しっかりと仕事をしながら、その収入を自分の趣味などに投じる人が増えています。 こういった人たちが上の8パターンで言う「ソロ充」です。

富 = 収入 - 支出 + (資産 x 運用利回り)

ここから、収入を上げつつ支出を減らして余剰資金を作り出し、投資に目を向ければ、上位互換である「お金持ち」への道が開けます。柱が1本増えることによって、幸せが崩れてしまう可能性は低下します。

人的資本は好きなことに集中投資

60歳まで働けば後は気ままな年金暮らしといった時代ではなくなっているようです。 これは「低金利」が原因で、日本の人口動態を考えると明るい未来を想像することは難しいというのが正直な感想です。

思っていた以上に長く働き続けないといけないとなれば、嫌な仕事を続けるにも限界が出てきます。 好きなことでお金を稼ぐスキルを身に付けることが必須です。

  1. 好きなことに人的資本をすべて投入する
  2. 好きなことをマネタイズできるニッチを見つける
  3. 官僚化した組織との取引から収益を獲得する

まとめ

  1. 金融資産は分散投資
  2. 人的資本は好きなことに集中投資
  3. 社会資本は貨幣空間で代替

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